白詰草は一途に恋を秘め、朝露に濡れる
 朝食が終わる頃を見計らって療養について打ち明けることは、想像以上に勇気を必要とした。でも両親も兄も反対派しなかった。話を聞き終わると、それがいいと賛成してくれた。特に兄は、グランハイム家から連絡が来て間もなくに同じことを両親へ進言していたようだ。

 だからロゼリエッタが望めば、いつでも迎え入れられる手筈は整っているという。


 何も言わなくても心配してくれていた家族の愛情に泣きそうになる。でも泣かずに笑った。強がる為にそうしたわけではない。嬉しかったからだ。

「それで、いつ領地へと出発なさるのですか?」

「今日が火曜日だから……今週の土曜日には向かうつもり」

 アイリに尋ねられ、漠然と思っていた予定を伝える。

 家族の同意を得た今となっては、本当は明日にでも出発したい気持ちはあった。けれどいつでも受け入れる状態にあるとは言え、さすがに早すぎるだろう。アイリに頼んだように、領地へ向かう為の準備だってしなければいけない。おそらくは今週末が実現しうるいちばん早い日だ。

「では金曜日までにご支度を整えておきますね」

「うん。お願いね」

「畏まりました」

 それが彼女の仕事だと言えばそれまでではあるけれど、アイリは予定外の面倒な仕事も嫌な顔一つせず引き受け、ロゼリエッタを見つめる。

 何を言いたいのか、自惚れではなく分かっているつもりだ。だからロゼリエッタは笑みを浮かべた。

「王都を離れることになるけれど、アイリも私のお世話係として一緒に来てくれる?」

「っ……! もちろんです!」

 途端に表情を輝かせ、アイリは強く頷く。自分の見通しが間違っていなかったことに安堵を覚え、ロゼリエッタは言葉を足した。

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