sugar spot
"能面で分かりにくいけど、プレッシャーに負けないで、頑張るところも、ちゃんと努力してるところも、スーツ姿も、好きだし、格好良い。
なんなら多分、ちゃんと初めて話して
仕事に対する姿勢を知った時から、
ずっと、思ってたかもしれない。"
心で思ったことと、口に出したことの境目が、よく分からない。
私もしかして、
自分が思った全てをありったけ、
この男に差し出してしまったの?
かばりと上体を起こして、文字通り頭を抱える。
多分寝癖もちゃっかりついてると思うけど、それどころじゃ無い。
パジャマ代わりにしているスウェット地のワンピースをちゃんと着ている、とそこで理解したら、着せてくれたのも目の前のこの男しか居なくて、もうなんか、身体の全部が熱い。
「ま、間違えた。」
「……間違えた?」
咄嗟に呟いたら、男の端正な顔立ちに異質な眉間の皺が浮き彫りになる。
顔を背けてしまいたいのに、それを予期した男に両手で頬を包まれて直ぐ阻まれた。
「なに、嘘だった?」
凄く近い距離でそう確認してくる男に、焦って
「そうじゃない、
"格好いい"だけ、言いたかったのに」
とそこまで口を滑らせてから目が合った先の眼差しが昨日と同じように、やけに愉しそうなことに気づく。
「……あんた、面白がってるでしょ。」
「いや?」
いつからこの能面は、こんなに隠すの下手になったんだと思うくらい、表情の緩みが分かる。
なんなの、結局また私ばっかり恥ずかしい感じになっている。
「…普通に、これからもちゃんと努力して、入社した時の考え方も忘れないようにしてまた仕事頑張るかって、思った。」
何故、私の言ったこと全てを掘り返す。
というかよく覚えてるなと言ってやりたいのに。
目を細めて顰めっ面を私がつくる分、目の前の男はどんどん柔らかい表情を見せてくるから、強く文句が言えない。
「ほんと、昨日から楽しそうですね。」
「……花緒、」
「なに。」
不服を告げた私の名前を呼んでくるから、渋々返事をしたら、「可愛い」と、とても小さく呟いた唇が、自分のものに重なった。