sugar spot
#2.「昨日の天敵は、今日も明日もずっと天敵」
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「…しかもよく考えたらお前だって、
"あ穂高"だろって気づいて!!
何であの時、そっちこそ改名しろって
言い返さなかったんだろう!?」
「わあ低レベル、いただきます。」
「…いただきますの前に悪口挟まないでよ。」
「子どもみたいな悪口言ってるのはどっち?」
「………」
ぐ、と言葉に詰まると、奈憂は深い溜息を漏らした後、綺麗にうどんを啜った。
「…大体私、アーリーのファンだから。
推しの悪口言うのやめて欲しい。」
「ファン!?
何そのアーリーってだっさい名前!?」
「え?同期女子みんな、
研修の時からこっそり呼んでたよ?」
「嘘でしょ?」
というか"同期女子みんな"の中に
当てはまらない私は何。
ほんとほんと〜と、奈憂はふわふわした声のまま私の言葉を流して、今度はお新香に箸を伸ばす。
芦野奈憂は、私の同期であり、宿泊研修の際は同部屋だったこともあって、恐らく同期女子の中では1番仲が良い。
小柄で可愛らしい顔立ちも、ふわっとした話し方も含めて女の子らしい印象を確実に与えるけど、自覚があるのか無いのか、たまにその柔らかいトーンのまま、直球で物を言う。
本社ビルから4駅ほどの、別ビルの中に入っている家具の流通系の部署に配属された奈憂は、今日はこっちで打ち合わせがあるらしく、ランチをしようということになった。
私たちが居るのは、老舗の雰囲気抜群のうどん屋さんで、枡川さんにおすすめだと教えてもらったお店だ。
「だって研修中、どんなワークやっても1番スマートだったし。アーリーは格好いいよ、超イケメン。」
「……」
「というか、花緒はいつの間にアーリーとそんな険悪になったの本当。
研修の最初からそうじゃ無かったでしょ?」
「……知らない。」
そんなの、私だって聞きたいくらいだ。
"いつから"なのか、
考えるのはもうとっくにやめたけれど。
「とにかく。私はもう2度とあの男に弱みを握られないようにする!!」
「歓迎会でも助けてもらっておいて何言ってんの。」
「…あれは気まぐれ。」
その証拠に、私がお礼?として送ろうとした塩、というか本は腹の立つ言葉と一緒に突っ返された。思い出すだけでムカつく。
「…花緒って馬鹿だよねえ。」
「奈憂まで何なの。」
「だって馬鹿なんだもん。
とりあえずどうでも良いから、お昼食べたらアーリーのとこ連れてってね。」
「え、なんで。しかもどうでも良いって言った?」
「折角こっちのオフィス来たんだから、推しに会うのは当たり前でしょ?
なんなら花緒よりずっと会いたかった。」
「…あの男に私、負けたの?」
「だって花緒、馬鹿だもん。」
まだ言うか!!
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「…しかもよく考えたらお前だって、
"あ穂高"だろって気づいて!!
何であの時、そっちこそ改名しろって
言い返さなかったんだろう!?」
「わあ低レベル、いただきます。」
「…いただきますの前に悪口挟まないでよ。」
「子どもみたいな悪口言ってるのはどっち?」
「………」
ぐ、と言葉に詰まると、奈憂は深い溜息を漏らした後、綺麗にうどんを啜った。
「…大体私、アーリーのファンだから。
推しの悪口言うのやめて欲しい。」
「ファン!?
何そのアーリーってだっさい名前!?」
「え?同期女子みんな、
研修の時からこっそり呼んでたよ?」
「嘘でしょ?」
というか"同期女子みんな"の中に
当てはまらない私は何。
ほんとほんと〜と、奈憂はふわふわした声のまま私の言葉を流して、今度はお新香に箸を伸ばす。
芦野奈憂は、私の同期であり、宿泊研修の際は同部屋だったこともあって、恐らく同期女子の中では1番仲が良い。
小柄で可愛らしい顔立ちも、ふわっとした話し方も含めて女の子らしい印象を確実に与えるけど、自覚があるのか無いのか、たまにその柔らかいトーンのまま、直球で物を言う。
本社ビルから4駅ほどの、別ビルの中に入っている家具の流通系の部署に配属された奈憂は、今日はこっちで打ち合わせがあるらしく、ランチをしようということになった。
私たちが居るのは、老舗の雰囲気抜群のうどん屋さんで、枡川さんにおすすめだと教えてもらったお店だ。
「だって研修中、どんなワークやっても1番スマートだったし。アーリーは格好いいよ、超イケメン。」
「……」
「というか、花緒はいつの間にアーリーとそんな険悪になったの本当。
研修の最初からそうじゃ無かったでしょ?」
「……知らない。」
そんなの、私だって聞きたいくらいだ。
"いつから"なのか、
考えるのはもうとっくにやめたけれど。
「とにかく。私はもう2度とあの男に弱みを握られないようにする!!」
「歓迎会でも助けてもらっておいて何言ってんの。」
「…あれは気まぐれ。」
その証拠に、私がお礼?として送ろうとした塩、というか本は腹の立つ言葉と一緒に突っ返された。思い出すだけでムカつく。
「…花緒って馬鹿だよねえ。」
「奈憂まで何なの。」
「だって馬鹿なんだもん。
とりあえずどうでも良いから、お昼食べたらアーリーのとこ連れてってね。」
「え、なんで。しかもどうでも良いって言った?」
「折角こっちのオフィス来たんだから、推しに会うのは当たり前でしょ?
なんなら花緒よりずっと会いたかった。」
「…あの男に私、負けたの?」
「だって花緒、馬鹿だもん。」
まだ言うか!!