sugar spot
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「梨木。あんたよく現代の大学生やってきたわね。」
「……す、すいません。」
そして始まった研修で、大丈夫じゃないのは私の方だった。
テーブルの真隣に仁王立ちして腕組みをしている吉澤さんは美人な分、迫力がとんでもない。
今日の午前中の研修は、《Excel講習》で。
それを聞いた時から、嫌な予感はしていた。
ど文系の私は、パソコンはまあ操作できるにしてもExcelは殆ど使ったことがない。というより避けてきた。
パソコンに各々送られたExcelシートに提示されたワークをひたすらこなす、というとても単純なものだが、“関数を組む“ことすら危うい私は、出だしから分からないことだらけで無事に躓いた。
同期の中でぶっちぎりの出来の悪さを露呈させた私は、こうして吉澤さんに直接のスパルタ指導を受ける羽目になっている。
「梨木、午後までにはこのワーク提出して欲しいんだけど?解説したいから。」
「……昼休みに必死こいて頑張りマス…」
「有里。もうワーク全部終わった?」
「はい。」
「じゃあちょっと暇があったらこのポンコツ梨木に教えてやって。私、今からランチミーティングあんのよ。」
「わかりました。」
教育担当が、“ポンコツ“とか言って良いのかと突っ込みたくなったけど、本当にその通りなのでぐうの音も出ない。
慌ただしくその場を去る吉澤さんに続いて、同期のみんなも、漸くやってきた昼休憩を待ち望んでいたかのように、ぞろぞろと会議室を出て行ってしまう。
奈憂にも、にこやかに笑って見捨てられた。
あの女、許さない。