sugar spot
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「ええ?バーベキュー来ないの?」
「うん。予定ある。」
鬼の吉澤さんによるスパルタ宿泊研修の1日目を終えて、みんなで食事をとっている時、奈憂に言われてそう伝えた。
「え〜多分、有里も来ないんだよねえ。
推しも居ない、花緒も居ない。モチベ無くなった。」
カレーを一口スプーンで運びつつ不満げに言われて、突然のあの男の名前にドキッとしたけど隠すように笑う。
「どこか行くの??」
「え!?」
「どよーび。」
「あ、うん。ずっと行きたかった写真展。」
好きなバンドが居ると、入社してすぐの頃の飲み会で奈憂には既に伝えていた。
東京に来られて嬉しいということを興奮気味に熱弁したのに「へ〜私、音楽興味ないなぁ」とあっけらかんと言われて、なんかもはや清々しいなと思ったのを覚えている。
「私もついていこうかな。」
「え!?」
「全然写真展は興味ないけど、
花緒と休みの日に遊んでみたい。」
小さな可愛らしい口にカレーを運んで、もぐもぐと咀嚼している奈憂をただ、瞬きと共に見つめてしまった。
「…それはどういう反応?」
「あ、遊んでみたい、というのは分かるなと。」
「……でも土曜日はダメなんだ?」
「えっと、」
「分かった、また来月あそぼ。」と何かを悟ったのか笑ってあっさり引く奈憂に罪悪感が募る。
どう反応したら良いのか考えあぐねた難しい変な顔のままに、視線を外したら別のテーブルで食事をしている能面が目に入った。
"…写真展の場所から、アクセスそんなに悪く無い。"
あいつがよく分かんないことだけ言い残すから、私も奈憂になんて言っていいか分からない。
この宿泊研修では、予め設定されているグループ行動が多くて、それ以外の人となかなか研修中に話は出来ない。
なので能面とも、この施設に来てからまともに会話は交わしていない。
…いや別に、それは良いのだけど。
そう思った瞬間、ふと何かに気付いたようにバチッと男と視線がかち合ってしまった。
中性的な顔に、手を添えてるカレー皿はあんまり似合わない。
顰めっ面のまま見てしまっていた私に気付いて、それに応戦する睨みを利かせられて、また苛立ちが増幅した。
こいつほんと、お気に入りの曲を
送ってくる前に私に言うことないのか。