金平糖の甘い罠
出会い

「ピンボーン」

「はじめまして、103号室の永井です。よろしくお願いします。」

 引越しの挨拶でお隣の奥さんが挨拶に来られた。
 奥さんの隣には小さな男の子が恥ずかしそうに後に隠れている。

「お子さん何歳ですか?」

「2歳です。」

「じゃあ、うちと同じ歳ですね。仲良くして下さい。」

「よろしくお願いします。」

 103号室の永井さん、目鼻立ちのはっきりした美人で、見た目は少し派手だけど明るくて感じが良さそうな人だ。
 しかも同じ歳の子供がいるというのは、新しい環境で不安がいっぱいの中、恵にとって頼もしい存在だった。
 ただ少し人見知りの恵は、近所付き合いというものが少し煩わしいと感じていた。

 それから1ヶ月、永井さんとはあまり顔を合わせることも無く、会えば挨拶程度の関係だった。
 寂しいと感じる事もあるが、これぐらいが程よい関係と言い聞かせていた。
 子供も同じ歳ということはこれから幼稚園から中学校までは同じということだ。
 一生住むであろうこのマンションで、ご近所トラブルにはなりたくない。
 会えば挨拶と笑顔だけを心がけていた。

 
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