拗らせ片想い~理系女子の恋愛模様
田中さんのお店で和美と合流して、久しぶりに会えたので、話が弾み、調子にのってお酒も2杯飲んでしまった。
だいぶ、良い気分になったころ、和美の携帯に彼氏の飯島さんから電話があった。
これからお迎えに来るらしい。

いつも私のことを迎えに来る浦橋くんが出張のため、和美は頻りに私のことを心配していたが、気分も悪くないし、頭もしっかりしている。電車で帰り、駅からはタクシーに乗るほどの距離でもなくすぐだ。

それから間もなく飯島さんが和美を連れて帰り、私もそろそろ出ようと、お手洗いに寄って席に戻ると、田中さんが待ち構えていた。いつもの黒のエプロンは外され、帰り支度をしている。

「どうしました?今日はお店もうおしまいですか?」

「うん。早めにあがらせてもらった。送るよ」

え?今、送る?と言ったかな。まさか、田中さんに送らせるわけにいかない。いつもお世話になっているお店のバーテンさんだ。いくら和美の知り合いだからと言って、いちいち送らせていたらきりがないだろう。

「だ、大丈夫です。全然酔ってないし、帰れます」

「一人なんでしょ?だったら送るよ。危ないから」

「危なくないです。いつも仕事でこれくらいの時間になっているし」

「多分俺同じ方面だから気にしないで。行こう」

腕を掴まれお店の外に連れ出される。見かけによらず結構強引だ。

「あの、本当に大丈夫ですから。田中さんを煩わせるわけにはいかないので。」

しかし、田中さんも中々譲らず、お店の前で押し問答をしていたが、結局私がここから家までタクシーで帰ることで落ち着いた。
家についたら和美に連絡するのを約束させられ、田中さんがタクシーを止めてくれる。

何度もお礼を言ってタクシーに乗り込むと、走り出すまで見送ってくれた。

一人になり、そっとため息をつく。
田中さんと二人でいるなんて、話題もないし、気まずいだけだ。須藤さんとはタイプが若干違うが、圧がすごいところは似てる。

彼氏が出張中だなんて、和美との話を聞いていたのだろうか。気を付けないと、どこで聞かれているかわからない。

家に着き、約束通り和美に着いた、とメッセージを送る。またね!とすぐ返信があり、ひと安心だ。

最近メッセージのやり取りはあるが、声を聞いてないな、と思いスマホを取り出すと、ちょうど浦橋くんから着信があった。

「もしもーし!」

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