拗らせ片想い~理系女子の恋愛模様
トラブル
結局、週末に浦橋くんと会えるのは日曜日になりそうだった。
土曜日に戻れたとしても夜遅くなるらしい。戻ったら連絡をくれることになっていた。
土曜日の日中、たまった家事を終えるとすることがなくなり、午後に浦橋くんの部屋を掃除しておこうかと思い立った。
ついでに食材の買い物をして冷蔵庫においておけば、明日は浦橋くんの家で一日ゆっくりできるだとう、と、早速スーパーに寄り浦橋くんの家に向かった。
元々部屋の鍵は、出張が増えるタイミングで、もし長期で留守にする場合は郵便物のチェックとたまに部屋に風を通してほしいと、預かっていた。
買い物をして時計を見ると、まだ昼の2時前だった。
この時間なら掃除もゆっくりできるし、明日の食事の下ごしらえまでできるかもしれない。
もし、夜の早い時間に浦橋くんが戻ってこられそうなら、このまま部屋で待っていてもいいと思っていた。
浦橋くんの部屋がある2階まで階段で上がり、廊下を歩いていると、浦橋くんの部屋のドアが開いた。
・・・早めに帰ってきてたんだ。そうなら言ってくれればよかったのに、と思い、駆け寄ろうとしたら、浦橋くんの後ろから小柄な女性が続いて出てきた。すごく楽しそうに、何事か話をしながら笑い声も聞こえる。
誰?・・・何で浦橋くんの部屋から女の人が一緒に出てくるんだろう。
何が起こったのかわからず、頭がパニックになる。
驚きすぎて一歩も動けず、手が震えてくる。せっかく買い物してきた荷物も持っていられず床に落としてしまう。
その音にびっくりしたように、二人が私を見た。
浦橋くんが驚いたように目を見開き、満里子、と小さな声で言いながら私に向かって歩いてきた。
私は思うように体を動かすことができず、じりじりと後ずさるが、すぐに手首を掴まれる。
「なんで・・・」
「ごめん、違うんだ。これから大学時代の友達の結婚式の2次会に行くところなんだ。さっき出張先から帰ってきて着替えて・・・」
「今日は夜まで仕事だって・・・・」
昨日の電話では今日は夜まで仕事だと言っていたはずだ。何時ころになりそうかはまた連絡すると・・・
言葉が続かず、浦橋くんの後ろに少し離れたところに立っている女性に目線を向けると、浦橋くんは私の目線を追ってチラリと女性を見てからまた私の目を見て言った。
「大学の同級生で新幹線で一緒になったんだ。一緒に二次会に行こうということになって着替える間待っててもらった」
私の手首を痛いぐらいに握って、必死な様子で言う。
だからって部屋に入れることはないじゃないか。
本当に新幹線で一緒になっただけ?昨日の夜に出張先で一緒に過ごし、一緒に帰ってきたのではないか、それとも実は昨日の夜にはこっちに戻り、この部屋で一夜を共にしたのではないか、そもそも、何で友達の2次会のこと黙っていたのか・・仕事なんて嘘ついて。
色々頭をよぎり、浦橋くんの顔を見ていられない。
下を俯いていると、涙が落ちてきた。慌てて鼻をすすると、浦橋くんの手を振りほどき、バッグからハンカチを出して涙をふく。
それを見た浦橋くんが、焦ったように、もう一度私の手首を掴み自分のほうへ引き寄せながら言った。