拗らせ片想い~理系女子の恋愛模様
「満里子ごめん、ちゃんと話そう」

そう言って部屋に入ろうと私を引っ張って歩き出し、女性に向かって言った。

「悪いけど、一人で行ってくれる?」

女性は驚いたように浦橋くんを見つめ、それから困ったように呟いた。

「え、でも・・・」

二次会がどこで何時からやるのか知らないが、浦橋くんだって行く約束をしているのだろう。

それに、私だって今の状態で浦橋くんと冷静に話すことができる自信がない。ましてや、あの女性と一夜を過ごしたかもしれない部屋に足を踏み入れる勇気がない。

浦橋くんの手を振りほどき、後ずさりながら言った。

「大丈夫だから。二次会行って」

「行かない、満里子と話してから行けたら後から行くよ」

「いいの。行ってほしい。今日は帰るね」

そう言って浦橋くんに背中を向け、足早に廊下を歩き出すと、すぐに浦橋くんに肩を掴まれた。

「せっかく来てくれたんだろ。話をしよう」

「・・・ごめん、ちょっと今無理だから。今日は帰る」

浦橋くんを両手で押し、距離をとるともう一度言った。

「・・・そのスーツ素敵だね。二次会行って。今は話できない。帰るね」

「・・・・」

浦橋くんが着ているスーツは全体的にグレーで少し光沢がかかっており、襟のところが黒く縁取りされている。
もちろん私は初めて見るスーツだ。
髪の毛もしっかりワックスで固められていて、ポケットチーフとネクタイがお揃いの柄でとてもおしゃれだ。こんなに着飾った浦橋くんをみるのは初めてだ。

もともときれいな顔をしているのもあり、こういう姿をみると王子様みたいだ。
横に並んでいたのが私ではなく、そこにいる、小柄で女の子らしくてピンクのワンピースが似合う彼女だということに、また私は傷ついた。

顔が歪みそうになるのを必死に抑え、再び浦橋くんに背を向けて歩き出すと、浦橋くんが焦ったように少し大声で言った

「夜、連絡するから。ちゃんと話そう」

夜になっても話せるかどうか自信がない。返事をせず全力で駆け出した。

一度部屋に帰るが、ジッとしていてもマイナスなことばかり考えてしまう。とりあえず、外に出て気分転換しよう、と20分程度電車にのりショッピングモールに行く。
あてもなくブラブラしていてもただ疲れるだけだ。

家に帰る気にもなれず、和美に連絡してみる。
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