拗らせ片想い~理系女子の恋愛模様
うん、と頷くと、真田君も優しく笑って頷いた。

金曜の夜に私から浦橋くんに電話をしてみたら、すぐに応答してくれた。
今日中には部屋に戻る、とのことだったので、明日のお昼頃、浦橋くんの部屋に行くことにした。
あの日からもう三週間だ。いい加減向き合わないと、すれ違ったまま終わってしまう。

翌日、早めに家をでて、食材や甘いスイーツを買い込んで浦橋君の部屋に向かう。
あの日、めかしこんだ浦橋くんと一緒にいた女性の姿が頭によぎり、胸に苦いものが込み上げてきた。
浦橋くんとちゃんと向き合えるだろうか、態度が悪くならないように注意しなければ、と考えながら歩いていると、前から見たことのある女性が歩いてきた。

・・・彼女だ。浦橋くんと一緒にいた同級生の女性。
何でこんなところにいるんだろう。彼女は東京に土地勘がないから、と言っていたから、浦橋君の地元に今も住んでいるはずだ。

彼女が歩いてきた方向には、浦橋くんの部屋がある。
まさか・・・・

私はその場から一歩も動けなくなり、彼女を見つめていると、向こうも私に気づき、驚いたような顔を一瞬したあと、薄く微笑みながら私に会釈をしながら近づいてきた。

「先日は失礼しました。タケのところでお会いした方ですよね?」

タケ・・・猛・・浦橋くんのことだ。私は名前で呼んだことは一度もない。
それだけで涙がでてきそうになる。

「こんにちは」

本当は聞きたいことがたくさんあった。だけど何も聞きたくなく、挨拶だけして、通り過ぎようとしたら、あの、と声をかけられた。
振り向くと、申し訳なさそうな顔をして言った。

「二次会のこと、タケは何も言ってなかったんですよね。昔からそうなんです。最初はマメですけど、だんだん面倒になって連絡とか後回しにするようになるんですよね。まあ、私たちは付き合いが長かったんで仕方ないんですけどね」

大学の同級生という間柄だけでなく、元カノ、ということか。そんな気がしていたのだが、悪い予感は当たるものだ。

ふふっ、と笑いながらしゃべる彼女は、私より頭一個分小さい。上品な白いブラウスにふわりとした水色のスカートに華奢なミュールを履いている。雑誌から飛び出してきそうな、今どきのおしゃれな格好だ。

この前会った時も、とても可愛らしいピンクのワンピースを着ていた。
いつも黒やグレーのスーツばかり着ている私とは大違いだ。
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