拗らせ片想い~理系女子の恋愛模様

3週間ほどたったころ、須藤さんの異動が決定となり、来週から経営企画部へ移ることになった。
仕事の引継ぎはほぼ終えているが、あくまでもこのプロジェクトのリーダは須藤さんがやることになるので、何かあれば相談にのってもらえることになっている。

そうは言っても、新しい部署では別の仕事もあり忙しくなるだろう。
あまり頼ることができなくなる。
今週中には課題を洗い出しておいた方がいいだろう。

夜20時を過ぎたころ、須藤さんに声をかけられた。

「そんなに細かい資料作らなくても大丈夫だろう。元々しっかり管理できてる」

「見直してみると、レビューの時に指摘されたところが、仕様変更されていないところが結構あるんです。須藤さんがいるうちにもう一度見ていただきたくて。明日には整理します」

「わかったけど・・・。何度も言うように、引き続きこのプロジェクトは俺がみるんだから今週中じゃなくていいんだから」

それは、わかってる。わかってはいるけど、不安でしょうがないのだ。
そもそも前回のレビューのときまでに仕様変更できていなかったのは私のミスなのだ。仕事もダメ、恋愛もダメ、なんて言われたら私の居場所がない。

「毎日遅いだろ?今日はもう上がれ」

あと一時間ほど仕事をしたかったが、仕方ない、今日はあがろう。

「疲れてなければメシ行くか?」

「いえ、今日は用事があるので、帰ります」

用事という用事ではないのだが、田中さんのバーに行くつもりでいた。

あそこはとても居心地がいい。田中さんもカウンターの中から特に話しかけてくるわけではないのだが、私が飲みすぎないように、さりげなく止めてくれる。それでも私が飲みたがる時は、軽めの飲みやすいカクテルを用意してくれたり・・・
今一番好きな場所だ。

それに、浦橋くんとは別れたわけではない。付き合っている人がいるのに、男性と二人になるべきではないだろう。

須藤さんが、私が席を立つのを真横で待っているため、これ以上仕事することはできず、帰り支度をして席を立つ。
下まで一緒に行こう、と歩き出す須藤さんの後ろについて歩く。

「最近疲れてないか?大丈夫か?」

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