拗らせ片想い~理系女子の恋愛模様
ごめんなさい、と呟くように言って、また小さく頭を下げた。

「佐多さんは、一見、大人しそうだけど芯はしっかりしてそうでちょっとしたことには動揺なんかしそうにないのに、あの時、佐多さんはとても取り乱してて・・・。でもそれを表に出さないように必死に押し殺して泣くの我慢して・・。そんな佐多さんにタケは一生懸命だった。
・・・悔しかったんです。」

そう言いながら俯き、沈黙が流れる。
沈黙に耐えられず、私が口を開いた。

「今日は・・・それをわざわざ?」

「待ち伏せしたりしてすみません。
タケと別れて1年以上たつのに、久しぶりに会ってどうしても戻りたくなってしまって・・・。だけどタケには貴方がいて。二次会に行く前に貴方と会ったとき、タケが貴方に向けたあの優しい目は、私のものだったのに、もう違うんだな、ということは、わかってはいたんです。

あの日は、二次会の日は、玄関までしか入ってません。
3週間前によりを戻したいって話に行った日も、部屋に入れてももらえませんでした。人が来るからもう帰ってくれって。あなたが来るんだな、とすぐにわかりました。
だから、あの日も半分待ち伏せしたようなものです。」

そう言って目を伏せた。

「先週、二次会費の精算で大学の友人たちと会ったんです。その時にタケの話を聞いたんです。二次会の日に恋人とすれ違ってしまったまま話ができてない、と、落ち込んだ様子だった、と聞いて・・・。
私の身勝手な嫉妬のせいで、タケを苦しめて、佐多さんのことも傷つけたなら、謝りたいと思いました。」


四年間という長い時間、松本さんはずっと浦橋くんの横にいたのだ。
こんな可愛い人と付き合っていたなんて。声もしぐさも何もかもが可愛い。比べるとか、張り合うとかそういうつもりはないが、どうしても過去を想像してしまう。

クリっとし目を潤ませながら話をされれば、女の私ですらヤバい。万人が可愛いというだろう。
浦橋くんは、この小さくてふっくらした唇に何度もキスしたのだろう。
私に優しく触れるのと同じように、彼女にも触れていたのだろうか。私なんて付き合いだしてまだ数か月だ。彼女との時間のほうが私と一緒にいる時間よりも何倍も長い。

考えたくないのに、考えてしまい、軽く吐き気がしてくる。
会いたくなかった。知りたくなかった。浦橋くんの過去なんて考えたくもなかった。

< 128 / 250 >

この作品をシェア

pagetop