拗らせ片想い~理系女子の恋愛模様
ふと、松本さんの胸元のネックレスに目が留まる。この前、浦橋くんに選んでもらったという、例のネックレスだ。

彼女が私の視線に気づき、あ、これ、と、ネックレスをつまみ、苦笑いをしながら言った。

「二次会の会場の1階にアクセサリーショップがあるのを見て、ネックレスをつけ忘れてきてしまったので、タケに待っててもらって自分で買いました。選んでもらったなんて言いましたけど、横にいただけです」

彼女は地元の製薬会社にお勤めとのことで、今日は出張でこっちに来ていたらしい。今日中には地元に帰るとのことで、あと30分まっても私に会えなかったら諦めようと思っていたらしい。

「お話はよくわかりました。わざわざありがとうございました」

そう言って頭を下げて、立ち上がると、松本さんも慌てて立ち上がった。

「お引止めしてすみませんでした」

お店を出て、お互いもう一度頭を下げて別れた。

浦橋くんのことを信じていなかったわけではない。メールで送ってくれた内容と、松本さんの言っていることは殆ど合っていた。
しかし、これはもう私の気持ちの問題だ。
浦橋くんの過去に勝手に嫉妬して、勝手に自分で悲しくなっているだけだ。

最近、仕事も上手くいかない。
今までは、どんなに仕事で疲れても、ミスをしても、浦橋くんの優しさに触れると、明日から頑張ろう、と思えていた。
だけど、この先優しくされても、きっと松本さんの顔がチラつくだろう。そして私の知るはずのない過去を勝手に想像して、勝手に嫉妬して、勝手に落ち込むのだ。

恋愛経験が乏しいせいなのだろうか。
みんな、相手の過去の恋愛とどう折り合いをつけているのだろう。
自分にも過去があればお互いさまだと思えるのだろうか。

ため息をつきながら駅の改札を入ろうとすると、横からすっと近づいてくる影があった。反対側に少しよけながら顔を上げると、須藤さんが前に立っていた。

「ど、どうしたんですか?まだ仕事?・・・じゃないですよね」

松本さんに待ち伏せされ、一緒に帰っていた須藤さんには先に行ってもらったはずだ。とっくに帰っていると思っていたのだが、こんなところで何をしてるのだろう。

「いや、・・・大丈夫か?」

「・・・・・・・」

「知り合いって言ってたけど、不穏な感じだったし、時間も遅いから」

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