拗らせ片想い~理系女子の恋愛模様
私が松本さんと一緒にいるのを心配してくれていた、ということか。
平日のこんな遅い時間に申し訳なさすぎる。

「すみません・・・。あの、大丈夫です。本当に知り合いですし、話は終わりましたので」

「だったらいいけど・・・送るよ」

改札には入らず、タクシー乗り場に歩いて行くので、慌てて追いかける。

「大丈夫です。電車で帰りますから」

「俺、もう終電ないんだよ。どうせ途中だろ?」

確か須藤さんは私鉄に乗り換えのはずだった。その私鉄の終電に間に合わないということだろう。

私の背中を軽く押しながらズンズン進んでいき、あっと言う間にタクシーに乗せられてしまう。
結構強引だ。

私の住所を告げて走り出すと、しばらく無言だった須藤さんが口を開いた。

「何か悩み事?」

「・・・いえ、そういうわけじゃないんですけど・・・」

悩みを抱えているような顔にみえただろうか。

松本さんが会いに来てくれたことについては取り敢えず誠意を感じたし、言ってることに嘘はないと思えたため、浦橋くんに連絡を取ろうとは思っている。
だけど、まさか須藤さんに恋愛相談なんかできるわけがなく、口ごもる。
しかし、須藤さんは経験豊富そうだ。既に同棲している彼女がいるという噂なので今は落ち着いているのかもしれないが、かなりモテそうだし、それこそ過去には色々あっておかしくない。
しかし、仕事でお世話になっている先輩に気安くそんな話をできるわけもなく、沈黙が続く。

「顔色良くないな。ちゃんと食べてるか?」

「須藤さんこそ、忙しすぎですよね。休めてますか?」

「俺は大丈夫だ。そこまで忙しいわけじゃないし、週末はちゃんと休んでる」

そうか、同棲中ということは、食事はきちんとできているのだろう。週末ものんびり家で過ごすことができているのかもしれない。
何かリア充というか、仕事もプライベートも順調で私とは別世界の人みたいだ。

「いつもご迷惑かけてすみません。もっと戦力になれるように私も頑張ります」

はあ、とため息をつきながら、私をチラリ、と見ながら言った。

「お前さ、何度も言ってるけど、少し焦りすぎだ」

「焦ってる、わけでなないんですけど・・・」

「何のためにチームで動いてると思ってるんだ。一人でやりきろうと思うな」

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