拗らせ片想い~理系女子の恋愛模様
「吉田さんだって、他のチームの人たちも皆ちゃんとやれてます。私だけってわけにはいきません」

「何言ってんだよ。吉田だって全部一人でやれてるわけじゃない。未だにミスだってするし、皆で協力しあいながらやってる。
他の奴らだって、不得意なところは分担しながらやってるよ。」

そうは言ってもレベルが違うことなど私が一番身に染みてわかってる。
先輩たちは、わからないところは、苦手なところは、なのだ。私のように何もかも、ではない。

とにかく、と須藤さんは少し強めの口調で続ける。

「少しペース落とせ。俺がスケジュールはこれからもちゃんと見るから」

来週から異動になる須藤さんに、今週のうちに進捗を確認してほしくて作業内容をまとめていて、今週は少し遅い日が続いたのだ。

「すみません、ちゃんとやりますのでよろしくお願いします」

「・・・うん・・・・」

何かを言いかけたが、結局何も言わず、曖昧な返事をしたっきりで、再び沈黙が流れる。
ふと、横を見ると、少しウトウトしているようだ。
いつも隙がなさそうな須藤さんの寝顔はかなりレアだ。
何だか得した気分にになり、少し嬉しくなる。
本当にいつこなしてるのだろうか、と思うほどの業務量の多さだ。これから企画部では更に忙しくなるのだろう。私が須藤さんに追いつくのはかなり先のことだろう。もしかしたら一生ないのかもしれない、と思うと、また少し落ち込んできた。

仕事もダメ、恋愛もダメって、本当に上手くいかない。
つい、悪い方へ考えてしまいそうになるが、やれることを精一杯やるしかないのだ。

カバンの中のスマホが震え、取り出すと、浦橋くんからの着信だ。
今も毎晩電話をくれる。未だに電話に出れていないが、ちゃんと話をしなくては、とは思う。後でメールをしてみよう。

「電話大丈夫か?」

「あ、はい。起こしてすみません」

「いや。寝てたわけじゃないから。彼氏?」

「はい?」

「電話」

「あ、いえ、まあ、はい」

「・・・なんだよ、歯切れ悪いな」

「・・・」

別れてはいないが、もう何週間も連絡を取っていない状態で彼氏です、とは言いづらく、曖昧な言い方になってしまった。
須藤さんもそれ以上は聞いてこなかったので、私もそのまま黙る。

とにかく、家についてたら浦橋くんにメールしてみよう。

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