拗らせ片想い~理系女子の恋愛模様
「・・・出張中の食事は松本さんが支度してるって聞いて、どんな料理作るんだろう、私のよりずっと美味しいんだろうな、とか、浦橋くんは優しく笑って、美味しいって言ってるのかな、とか、タケって呼んでると知って、浦橋くんは彼女のこと何て呼んでるんだろう、とか、彼女のこの小さい唇に何回キスしたんだろう、何回触れたんだろう、胸はわたしより大きいかな、とか。
自分で自分が本当に嫌なんだけど、毎日そんなことばかり考えて、勝手に落ち込んで、疲れて、仕事でミスして・・・

ごめんなさい・・・。」

堪らず、涙があふれてしまった。
浦橋くんは悪くないと頭ではわかってるのに。泣く筋合いじゃない、って思ってたのに・・・。なのに、言わなくても言いこと言ってしまった。私は自分自身だけでなく、浦橋くんのことも傷つけた。

「時間をおけば、ちゃんと話せると思ったの。浦橋くんが送ってくれたメールを見て、私に嘘をついてたわけじゃないってことは、頭ではちゃんと理解できた。だけど・・・どうしても考えてしまって。
会えば酷いこと言うってわかってた。私の醜い心を知られたくなかった。だから、避けちゃってごめんなさい」

俯く私の手を、両手でギュっと握って、私を落ち着かせようとしてくれる。
それがツラくて、また涙があふれてくる。
時間がたつにつれて、涙の量が増えていく私を見て、指で涙を拭ってくれながら、私の顔を覗き込む。

「場所変えよう。ウチおいで。ゆっくり話そう」

浦橋くんの部屋、と聞いて、手がビクッと反応する。松本さんと並んでドアから出てきたときの映像が頭に浮かび、返事ができない。
それを察した浦橋くんが、すぐに取り繕うように言った。

「満里子のとこのほうがいいか。行こ」

「・・・・ごめんなさい」

「・・・・」

「私のせいだってわかってる。だけど、比べてしまって・・・あんな可愛い人が恋人だったなんて。浦橋くんの私の知らない過去を想像するとつらくて。
何でこうなのか、色々考えたんだけど・・・恋愛経験がないからなのか、それとも私の性格の悪さなのか、分からないんだけど、自分の心がこんなに狭いなんて、自分でも信じられないんだけど、だけど、どうにもならないから・・・」

浦橋くんは黙って私の手を握り続けて、何も言わない。だけど、私の手を放そうとはしない。

「・・・一緒にいると、ツライ。時間がほしい」

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