拗らせ片想い~理系女子の恋愛模様

「うん・・・。牧野くんに気持ちは全然なかったよ。浦橋くんのことがちゃんと好きだった」

「うん」

優しい目だ。目を細めて無言で私を見る目が懐かしい。いつもこんな目で私を見てくれていたことを思い出す。

「俺、色々嫉妬した。
牧野に見せる満里子の安心しきった顔が可愛くて好きだったんだ。だから研修中も、彼女と別れてないのに満里子にちょっかい出して嫌な思いさせたのも、嫉妬のせいだったんだ」

「・・・・・」

「付き合い出してからも、たまに牧野のこと思い出したりして・・満里子はアイツのどういうところが好きだったんだろうって思うと、それ以上に自分のこと好きにさせようって必死だった。

俺の、こんな情けない気持ち、満里子に絶対知られたくなかった。
だけど、この前の満里子の気持ち聞いて思ったんだ・・・。やっぱり最初に満里子を傷つけたのは俺だって・・・恋人がいるのに、嫉妬して満里子を傷つけた」

満里子より俺の方がよっぽどひどい、という浦橋くんの辛そうな顔を見たら、考える間もなく、涙があふれ出た。

「満里子の部屋から牧野が出てくるのを見て、昨日の今日でアイツと付き合う訳ない、何か事情があるんだ、と信じていながらも、嫉妬でどうしようもなくて、やり場のない気持ちっていうか・・・満里子もこんな気持ちだったんだ、ってわかったんだ。
だから・・・満里子は、自分を責めないでほしい」

涙が流れて、テーブルにポタポタと落ちる。
それを見た浦橋くんが、ハンドタオルで私の顔を拭いてから、テーブルも拭いてくれた。

「・・・ごめんなさい・・・」

口について出た言葉がそれだった。

浦橋くんは、ふっと小さく笑い、私の涙をまた指で拭ってくれた。

「何で謝るんだよ」

そう言って頭を撫でられる。本当に・・・いつもいつも浦橋くんは優かった。

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