拗らせ片想い~理系女子の恋愛模様
久しぶりに田中さんがいたせいか、気分よく飲むことができた。田中さんがいない時はマスターがその日によっておすすめのカクテルを作ってくれる。今日は田中さんがフルーツ系のさっぱりしたカクテルを作ってくれた。

「今日は機嫌いいな」

「はい。やっとプロジェクト終わったんです」

「だからって飲みすぎるなよ。ハラハラする」

そうだった。田中さんは遅い時間に一人で帰ろうとするとあれやこれやとうるさい。普段は無口で何を考えているのかわからないのに、このことになると急に過保護になり口うるさくなる。

「今日はちゃんとタクシーで帰るつもりなのでご心配なく」

だったらいいけど、という田中さんに、ご馳走様でした、と声をかけてお会計をする。

お店を出ると、田中さんが後ろからついてきて一緒に外にでる。
タクシーを呼んでくれたらしい。

一人で待てるのに、タクシー車で並んで待つ。

「別れたの?」

急に問いかけられ、一瞬なんのことかと思うが、浦橋くんのことだと思い、曖昧に頷きながら、ええ、まあ、と返事をする。
田中さんに浦橋くんの話はしたことなかったはずだが、やはり何かしら感じることがあるのだろうか。


「まだ好きなの?」

「・・・・・いえ、そういうわけじゃ・・・」

『好きな人』と言われて頭に浮かんだのは、浦橋くんともう一人、牧野くんだ。

牧野くんは、相変わらずたまに連絡がある。
会って食事に行くのは月に一度くらいなのだが、誘われればつい優先してしまう。
今週は連絡あるかな、と期待してしまっている気持ちが恋なのかどうかわわからない。恋だとしてもどうせまたツライ片想いだ。

その週末、たまった家事は明日しようと、朝からダラダラしていると、夕方に電話が鳴った。牧野くんだ・・・。
1か月以上ぶりだろうか・・・。


「牧野くん?」

「おう。今日何してる?メシ行かない?」

「・・・これから?・・・だよね。」

「うん。ダメ?」

ダメ・・ではないけど。いつも牧野くんの誘いはいつも急だ。これから支度するのは少し面倒だな、と思いつつ、牧野くんから聞く話はサッカーの話もその仲間の話も全て面白く、一緒にいて楽しいのは確かだ。仕事の嫌なあれこれとか忘れられるし良い気晴らしにもなる。これから出かけるのは億劫だが、出かけることにする。

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