拗らせ片想い~理系女子の恋愛模様
つい言ってしまった言葉の強さに、少し後悔するが、言ってしまったものはしょうがない。それに、最低と思っているのも事実だし、触ってほしくもない。

さすがに牧野くんも一瞬力が緩むが、すぐにグイって掴みなおし、店長に向かって私を差し出した。

「こいつのことちょっと見てて」

そう言いながらスマホを出し、どこかに電話しようとしてる。

「もう帰りたい・・・」

「そんな状態で一人にできるわけないだろう」

「放っておいて」

牧野くんには関係ない、と言うと、少し顔を歪ませながら、私から目を反らし、誰かと話し始めた。

店長は私の肘あたりを持ちながら、酔いが回ってフラフラしている私に、頻りに大丈夫?と話しかけてくる。
心配される筋合いはないし、少し体がふらつくが、頭だってしっかりしている。

「手、離してください」

「ごめんね。嫌かもしれないけど、少し我慢して」

牧野くんの言いつけを守って律儀に私から離れない。

電話を終えた牧野くんが近づいてきて、ほら、行くぞ、とまた私の腕を引っ張った。

もう抵抗するのも面倒になり、されるがままに歩いて行く。
牧野くんの歩調が速く、引っ張られるように歩いている私に気づくと、よいしょ、っと腰を抱くようにして掴まれた。

近い・・・
もうやめてほしい。
さっきの会話を聞いてから、下心があるようにしか思えなくなってしまっている。

しかし、時間がたち、大分酔いが回ってきたようだ。
しゃべるのも億劫になってきた。

1,2分歩くと、車が横にスーっと止まった。
牧野くんが後ろのドアを開けて、運転席にいる人に向かって、悪いな、と言いながら私を押し込む。

誰だろう、と、運転席の人を見ると、なんと牧野くんのお母さんだ。

「気分どう?大丈夫?」

そう声をかけられ、途端に申し訳なくなってくる。

「はい、大丈夫です。・・・・あの、一人で大丈夫なので、すみません・・・」

若干パニックになりながら、車を降りようとすると、牧野くんにぐいっと押し込まれて、バンっとドアを閉められる。
牧野くんは素早く助手席に乗り込むと、カーナビを素早く操作して、お母さんに一言い、車が走り出す。

「気分悪くなったらすぐ言ってね」

「・・・申し訳ありません・・・・」

お母さんに優しく言われて、もう恐縮するしかない。
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