拗らせ片想い~理系女子の恋愛模様
私がお店に行かなければいいことなのだが、意志の弱い私は。ついお店を訪ねてしまう。

罪悪感に苛まれてながらも、すっきりとしている自分もいる。昨日自分に纏わりついていた倦怠感はすっかりなくなっていた。
今日からまた頑張れそうだ。

着替えだけして出勤すると、いつもよりだいぶ早めについてしまった。
昨日須藤さんに言われていた資料の再確認をしていると、須藤さんがやってきた。

「おはようございます。早いですね」

「佐多のことだから、どうせ早く来てるだろうと思って。」

「たまたまですよ。良かったです早く来て。お待たせしちゃうところでした」

「資料どう?今見ちゃうけど」

「ありがとうございます。」

そう言って画面を須藤さんのほうに向けて、見やすいように動かし、席を立つ。

「コーヒー買ってきます。ブラックでいいですか?」

「おう。サンキュ」

若干寝不足だが、気分は悪くない。昨夜ささくれ立っていた気持ちも、もう落ち着いている。田中さんのおかげだ。

コーヒーを買う前にお礼のメール送っておこう、とスマホを出すと、既に田中さんからメッセージが来ていた。

『またおいで』

・・・・・そういうわけにはいかない・・・・いい加減甘えるのはやめないと。取り敢えず、ありがとうございました、またお店で。と返信をする。

コーヒーを二つ手に持って席に戻ると、須藤さんが手持ち無沙汰に座っていた。

「資料もう見たんですか?」

「うん。概ねOK。気になるところはメモ書いておいたから、そこ修正してマネージャー経由で送ってくれればいいから」

「何から何までありがとうございます」

「・・・今日は元気そうだな」

急に話が変わり、少し戸惑うが、須藤さんは割とこういうことが多い。話題が結構唐突に変わる。

「ふふっ。いつも元気ですよ」

「落ち着いたらメシ行こうぜ」

「・・・そうですね。」

「じゃあ、マニュアルよろしく」

ありがとうございました、と立ち上がりお礼を言うと、コーヒーサンキュな、と言いながら立ち去って行った。

何をやっても様になっていて、呆れるくらいカッコいい。
須藤さんの一緒に住んでいる恋人は一体どんな人なのだろう。
いつも一緒にいて、息が詰まらないのだろうか。私なんて、仕事の話をするだけでも緊張して体中がこわばってしまう。

< 168 / 250 >

この作品をシェア

pagetop