拗らせ片想い~理系女子の恋愛模様
いつの間にか、もうだいぶ出勤してきている。
マネージャーも在籍していたため、資料の件を軽く話、メール送付する。

牧野くんへの返事はしていないが、そのうち、もう少し時間がたてば私も冷静になれるかもしれない。少し時間をおくしかないだろう。

それからの1か月、新入社員が配属され、新しいプロジェクトも動き出して、しばらくは会社と家の往復だけだった。
特にこの1週間は毎日残業のプラス、土日出勤もすることになりへとへとだった。
今週に入り、ようやく仕様が固まり、順調に作業に入れることになり、まずはホッとしたところだ。

少し遅くなってしまったが、お酒を飲むほどの元気はないが、久しぶりに田中さんの顔が見たくなり、少しだけお店に寄ることにした。

お店までの前まで来ると、入り口横のスペースに人影が見える。
早い時間にはあまりいないのだが、遅い時間になると、その場所でたまにタバコを吸っている人がいる。一応喫煙スペースになっているので問題がないのだが、テラス席に近いため、殆どの人が遠慮してその場所で喫煙することがなくなっていた。
なので、珍しいな、と思い、チラリと目線を送ると、どうやら喫煙中ではなくカップルのようだ。
あまり気にすることなく、お店の入り口から入ろうとすると、ちょうど数人がお店から出てくるところだった。話しながらドヤドヤと出てくるので、少しぶつかりながら、カップルのいる方へよけながら振り向くと、間の悪いことに、ちょうどカップルが抱き合ってキスしているところだった。

こんなところで!と驚きながらも、ジッと見ているのも悪いので後ろに下がろうとするが、先ほどお店から出てきた団体がまだ束になっていて邪魔になる。
じゃあ、横に避けようと、カップルから目を反らしながら動こうとすると、突然、カップルの男性が女性を押しのけるようにして体を離した。

その拍子に男性の顔が見えた。

田中さんだ・・・。

女性の視界からは私は見えない位置だったので私には気づいていない様子だったが、田中さんは目を見開き私を凝視し、「満里子ちゃん」と小さな声でつぶやいた。

田中さんとは恋人同士ではない。
だから、田中さんが誰と何をしようが私が咎めることはできないが、田中さんに抱き合うような仲の人がいるならば、私はもう田中さんと二人で会うべきではない。

< 169 / 250 >

この作品をシェア

pagetop