拗らせ片想い~理系女子の恋愛模様
それを和美に言うと、苦笑いしながら言った。

「研修の時とは逆だね。あの頃は牧野くんが誠実で浦橋くんが軽薄で軽いヤツ扱いだった」

和美に言われて、確かに・・・と私も苦笑いする。
私はとことん、男を見る目がないのだろう。

和美は飲み足りないらしく、田中さんのお店で飲みなおそう、ということになった。

田中さんとのことを和美に言えていないだけに、かなり気まずいのだが、ここで断るのも変だ。

いなければいいな、という思いも虚しく、お店に入るとカウンターの中にいる田中さんが、いらっしゃい、とニコっと微笑んだ。
いつもと変わらない態度の田中さんを見て、田中さんは大人だし、第一私とのことを和美に知られたくないだろう、と身構えていた私は思い直し、緊張していたが何となく脱力し、奥のソファー席に座る。

いつものように、軽いカクテルを作ってもらい、ゆっくり飲んでいると、和美はワインをガンガン飲んでいる。相変わらずだ。
ザルの和美も、これだけ飲めばかなり上機嫌で、飯島君とののろけ話がほほえましくて、いつまでも聞いていられる。

私はたかが1杯軽いカクテルを飲んだのに、もう頭がボーっとしてきた。眠気も手伝ってきて、和美と会話を続けるのも億劫だった。
和美にそろそろ帰る、と言い出すのも面倒で、片肘をつきながら和美の話を聞いていると、田中さんが近づいてきて、そろそろね、と言いながら、炭酸水を持ってきてくれた。
さっぱりして美味しい。ありがとうございます、とお礼を言うと、うん、と微笑んで戻って行った。

もう二人で過ごすことができないのは寂しいが仕方ない。
この前抱き合っていた人は、チラリと見た限り、とてもきれいな人だった。
モデルか芸能人かと思うほど、スラリとしてスタイルの良い人だった。

和美が飯島君に電話するのに席を外すと、田中さんが、時間大丈夫?と言いながら近寄ってきた。
和美は恐らく飯島君と一緒に帰るだろう。
一人で帰る私に気を遣わせるのは悪いと思い、席を立ちながら、大丈夫です、と言い、スマホをだした。
誰かと連絡取るふりをしながら、田中さんから離れる。

大事な人がいるのに、私に気を遣わせるのは申し訳ないし、何だか・・・惨めだ。

飯島君が迎えに来て和美が帰った後、田中さんがタクシーを呼んでくれた。
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