拗らせ片想い~理系女子の恋愛模様
田中side

あの子には好きな人がいる。
それは最初からわかっていた。わかっていたが、俺は最初からあの子のことが気になっていた。
ここから帰るとき、必ず近くまで迎えに来る男がいる。恐らく彼氏だろう。

彼女が恐る恐る店に入ってきたとき、和美との待ち合わせしてる子だ、とすぐにわかった。
和美が言っていたとおり、真面目そうな子だ。
彼女が初めて来て以来、どうやらお店を気に入ってくれたらしく、すぐに一人でも来てくれるようになった。
お酒がまったく飲めないのに、やたら飲もうとする。

見た目もかなり幼く、和美ちゃんとタメには到底見えないのだが、かなり背伸びしようとしているように見える。
和美ちゃんの真似をしようとしているのか・・・だが、それには無理がある。俺だって敵わないくらい彼女はザルだ。

見た目も中身も真面目そうなのに、何となく危なっかしい、というか、放っておけない感じがするのだ。
彼氏もさぞかし心配だろう。

いつも帰り間際に電話かメッセージでやり取りしてから待ち合わせて帰っているのだが
ある時期からその様子がない。一人で帰ろうとするから、慌ててタクシーを呼んで押し込んだ。
たいして飲んでないのに足元もふらついているし、呂律だって回ってない。
それなのに、本人は全く素面な気でいるのだ。

その頃あたりから、もしかしたら彼氏とは別れたのかもしれないとは感じていたものの、元々そういう話をしない子だったので確かなことはよくわからない。
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