拗らせ片想い~理系女子の恋愛模様
送ってく、と耳元で言うと、素直に頷いて、バッグを持ってついてきた。

表に出て、タクシーを待っていると、満里子が声をかけてきた。

「田中さん、明日お仕事は?」

「休み」

「・・・私も休みです」

弱っているところに付け込むような気がして、こんな形で手に入れることに少し躊躇したが、これから少しずつ俺のものになればいい、そう思い、満里子の腕をとり引き寄せた。

「明日送る」

そう言って抱きしめると、コクンと頷いた。

店に入ってきたときはかなりふらついていて記憶も怪しそうだが
俺の部屋に入って落ち着くと、だいぶ顔色も落ち着いてきた。

シャワーを借りたいというので、タオルやスエットを出してやると、申し訳なさそうにしながらバスルームに入って行った。

ここに来てからほとんど目が合わない。
もしかしたら、酔いが醒めて後悔しているのかもしれない。
そう思うと、容易に手が出せなかった。

満里子が俺のスエットを着てバスルームから出てくるのを見たら、たかが外れそうになり、そのままベッドに押し倒したくなったが、ここで怖がらせても、と思い、入れ違いに俺もシャワーを浴びる。

弱いのに酒を飲み、かなり辛そうだったため、もしかしたら寝落ちしているかも、と思ったが、キッチンテーブルの椅子にちょこんと座っていた。

水を差しだしながら、眠くない?と聞くと、大丈夫です、と頷き、ニコっと笑う。
その顔が可愛くて、思わずキスをすると、一瞬ビクっと体をのけぞらせるが、抱きしめるとすぐに力を抜きしがみついてきた。

寝室まで手を引いて連れて行くと、大人しくついてきた。

明らかに緊張しているし、体がガチガチなのに、一生懸命俺のキスに応えようとしている姿が可愛くてつい意地悪してしまう。
一度離れて顔を覗き込むと、涙目になりながらまた俺にしがみついてくると、もう我慢も限界だった。

「つらかったら言って」

それだけ伝えると、あとは慣れない彼女を怖がらせないように、ついたかが外れて激しくしてしまいそうになるのを押さえるのに必死だった。精一杯優しくしようとしたが、途中からはもう夢中だった。細いのに柔らかい満里子が愛おしくてしょうがない。

寂しさを埋めてたいだけかもしれない。
俺のことを好きなわけじゃないことくらいわかっていた。
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