拗らせ片想い～理系女子の恋愛模様

だけど、どんな形でさえ、今俺の腕の中に満里子がいることが嬉しかった。
大事にしたいと思う。これから少しずつ、俺のことを好きになればいい、絶対に好きにさせる、と思いながら外が明るくなるまで満里子を離さなかった。

それから何度か一緒に過ごすうちに、色々話してくれるようになった。
ちょっとしたすれ違いから付き合っていた同期と上手くいかなくなり、別れたこと、その彼より前から片想いをしていた男と最近会っていたこと、仕事で優秀な先輩に囲まれて焦っていること、どの話を聞いても、満里子らしかった。

真面目、というと、彼女は少し嫌がるが、一言で彼女を表すならやはり真面目だ。
彼女の良いところは、基本的にはポジティブだ。上手くいかなくなると、弱音を吐いたり落ち込んだりすることもあるが、常に前を向いているし、きっと一緒に仕事をしていたら、彼女の成長を目の当たりにするのだろう。

弱っているとき、俺の側に来てくれることが、たまらなく嬉しかった。
必要とされていると思えたし、思いっきり甘やかして俺に落ちればいい、と思っていた。

なのに・・・
真面目な彼女は、特に男女関係に関しては潔癖なのだろう、とは、前の彼氏と別れた時の話でも感じていたのに・・・

最近、職場の同僚のその女性から声をかけられる回数が多くなったと感じてはいた。
食事に誘われたこともあるが、親父の店の手伝いをしていることを理由に断ると、誘われなくなったが、店に来るようになった。
美人で目立つ彼女は一人で飲んでいるとすぐに声をかけられる。大体は本人が上手くかわしているが、たちの悪い客は妙にしつこく絡んでいたりするため、彼女にほどほどにして帰るように告げた。

その日は彼女も良い感じに酔っぱらっていて、俺に送れと、グズグズと言い寄ってきた。
宥めながらタクシーを止めるために、店の外に出ると、急に抱き着いてきて不意打ちでキスされた。
背の高い彼女とはほぼ顔の位置が変わらず、かわしきれず、一瞬抱き合うようになってしまった。

そこに・・・満里子が来た。
明らかに気づいただろうに、無言で通り過ぎる。そりゃ、そうだよな、と、思いながらもタイミングの悪さと、自分の隙に腹立たしさが込み上げてくるが、自業自得だ。

同僚の女性には悪いが、好きな人とじゃないと無理だ、と告げて帰ってもらう。傷ついた目を見たら少しだけ心が痛んだが、満里子に見られたことの腹立たしさのほうが大きかった。
しかし、きっともう手遅れだろう。
潔癖な彼女は、他の女に触れている俺を見たからには、もう二度と俺に触れさせないだろう。

せめて好きだと伝えたかった。
もう一度、少し時間がかかるかもしれないが、満里子に触れらることが叶うことを願うしかない。