拗らせ片想い~理系女子の恋愛模様
「私なら全然大丈夫です。休日は暇なことが多くて、今からどう?って言われても結構行ってましたから」

自分から言っておいて、牧野くんのことを思い出してしまい、何だか暗い気分になった。せっかく須藤さんが誘ってくれたのに・・
そうだ。一つ確認しておかないと・・・

「須藤さん・・・・私がここに座っても大丈夫なんですか?恋人とか・・・・」

「ん?」

急に低い声を出され、鋭い目でチラっとみられる。こ、怖い・・・。プライベートに踏み込みすぎだろうか・・・

「別れたんだ。もう随分たつ」

「そう、なんですね。すみません、余計なこと言って」

随分前に別れたのは、噂に聞いたことのある、年上の恋人のことだろうか。
いつも一緒にいる、派遣の梅田さんとは付き合ってないのか・・・

「初めてじゃないか?俺のこと聞いてくるの」

「そ、そうですかね。スミマセン、余計なことを・・・」

「いや、ちょっと嬉しい。全然俺に興味ないみたいだったから」

ふっと笑いながら私を見る目が優しい。
いつもこうなら話しやすいのに、と思い、ついジッと顔を見つめてしまう。

ん?と、不思議そうに聞いてくるので、別に何も、と答えるが、内心少し嬉しかった。

須藤さんが連れて行ってくれたお店は、車で30分足らずの住宅街の中にある、一軒家のレストランだった。
外から見た感じだと、こじんまりとしているように見えたが、中は結構広かった。

「こんばんは」

「いらっしゃいませ。どうぞ」

ご夫婦だろうか。奥様らしき人が奥のテーブルまで案内してくれる。カウンターの中で調理をしているのが旦那様か。あとは若い女の子がフロアで接客をしている。

「こんにちは」

奥様らしく人がそう言って水を置いてくれる。

「須藤さんにはいつも来ていただいているんですよ」

「大学の側なんだ。学生のころからずっとお世話になってる」

須藤さんが、どれも本当に美味しいから、と言ってメニューを差し出してくれる。

言われたとおり、どれも美味しそうで目移りする。
悩んだ挙句、ビーフシチューのセットにする、というと、ニコっと笑い、すっげー、うまいよ、と言い、須藤さんはオムライスのセットにしていた。

学生のころから来ていたなんて・・・何年前だろう。学生時代の須藤さんは全く想像がつかない。
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