拗らせ片想い~理系女子の恋愛模様
責められてる理由がわからず、口を利く気にもなれず取り敢えず黙る。もともと自分のこと可愛いなんて思っていないので、可愛げなくて結構です、と心の中で悪態をつく。

中澤君に誘われた日は予定がなかった。
待ち合わせは休日の昼間、どこがいいですか?どこでも、じゃあ海の側でいい?いいよ。
そんなやりとりで決めた。
デートなんて認識がなかった。

昼下がり、ふたりで海沿いを話しながらブラブラして、日が落ちたからショッピングモールへ行って、お腹空いたから最上階のレストランに行ったら、たまたま美味しくて、ラッキーだったね、と話しながら食事をした。

映画館の前を通った時、これ観たかったんだよね、という話はしたが、別に次の約束をしたわけではなかった。

確かに出かけた後、中澤君からメッセージが来た。
『とても楽しかった、また一緒に出掛けたい、ますます佐多さんのことが大好きになりました』
というような内容だった。
私はそれに対して返事をしていない。無視するのも悪いと思ったし、変に畏まって断るのも違う気がして、ペコリ『ありがとう』のスタンプで返しただけだ。

中澤君とお付き合いする気が今のところない。そういう雰囲気を出してくるなら、もう会わないほうがいいだろう、と思っていたところだ。

そもそも、誰に聞いたんですか、このこと、と聞くと、たまたま耳に入っただけだ、と不機嫌な声で言われた。

せっかく美味しい食事だったのに・・・。気まずくなってしまって、お店の人に申し訳なかったと思い、辺りを見渡すが、少し混雑してきた店内で私たちに気にする様子は伺えなかった。

「デザートいかがですか?」

奥様がテーブルのお皿を下げながら聞いてくれ、須藤さんの顔をチラリと見ると、頼む?と聞いてくれたが、もうお腹いっぱいだと、答えると、コーヒーとカフェラテ、と頼んでくれた。

そういえば・・・もう2年近く前になるが、須藤さんにカフェラテご馳走してもらったことが何回かあったな。
私が好きなこと、覚えてくれたんだ、と少し嬉しくなってくる。

中澤君の話題で、少し気まずくなってしまったが、お店を出る頃にはまたいつもの須藤さんに戻っていた。

お会計の後、外に出ると、須藤さんに、これ、と袋を渡された。

「後で食べてって。さっきデザート頼まなかったから」

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