拗らせ片想い~理系女子の恋愛模様
つい、被せるように大声で言い返してしまい、我に返るが、もう遅い。隣のテーブルの女性たちが気にしてチラチラとこちらを見ている。
いつの間にかドリンクも運ばれてきていて、気まずくなり、無言でポットからカップにお茶を注ぐ。

熱すぎず、ちょうどいい飲み頃で、一口飲むと、ふわり、と口の中にシナモンの風味が広がり、とても美味しい。今までカッとなっていた気持ちが急速に冷めてくる。

「・・・すみませんでした。これいただいたら行きますね」

本当はもう少し味わって飲みたかったが、色々考えて、距離を置き、自分なりに仕事のやり方を考えたつもりだったのに・・・
これ以上梅田さんと拗れて、須藤さんにとの関係に影響するのを避けるためだったのに・・・

私らしい、って何だろう。

言われたことだけやればいい、そういうことだろうか・・・・

ダメだ、何もかも悪い方に考えてしまう。早めにここは退散しよう。

せっかくの紅茶だったが、グビっと飲み干して、千円札をテーブルに置き、お先に失礼します、と立ち上がると、手首を軽く掴まれる。

「ごめん、言い方が悪かった」

「・・・いえ。私こそ、生意気言ってすみません」

お店を出ると、鼻の奥がツンとしてきた。
涙がこぼれそうだった。

自分でも何が悲しかったのかよくわからなくなってきてるのだが・・・
やっと近づけたと思ったのに。
以前の須藤さんに戻ったみたいだった。
威圧感たっぷりの、怖い先輩だった。
また遠くなってしまったようで、寂しかった。

もうやめたはずなのに・・・・。
寂しかったり、疲れたりしたときに、ここに来るのは、もうやめよう、って決めたのに・・・・また田中さんのお店に来てしまった。

ここ最近、ずっといなかったのに、今日はカウンターの中に田中さんがいた。

「いらっしゃい」

そう言って私に向けてくれる笑顔は以前のままだ。

一瞬迷ったが、ソフトドリンクを注文した。

「ジンジャーエールください」

「・・・飲まないの?」

「はい」

「飲みに来たんじゃないの?」

「田中さんがいなければ飲んでました」

「ふっ。何それ」

軽く笑いながら、視線をチラっと私に向けてくる顔は相変わらずセクシーだ。

「もうやめたのに、また田中さんに色々言っちゃうから」

「いつでもおいで、って言ったでしょ」

「・・・・・」

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