拗らせ片想い~理系女子の恋愛模様
翌週の月曜日、出社早々木村君に声をかけられた。
「今日の昼、何か予定ありますか?」
「特にないけど・・・何?」
「少し早めに外行きません?佐多さんの好きそうなパスタ屋さん見つけたんです」
「うん。ありがとう、楽しみ」
11時を過ぎたころ、そろそろ出れる?木村君が声をかけてきた。
「ちょっと早すぎない?」
いくら何でもまだ早すぎるだろう、と思ったが、木村君は平然と
「マネージャーにも言ってあるから大丈夫」
急かせるように私を立たせて、先にエレベータの方へ行ってしまう。
「午後、経企部と打ち合わせがあって、その件も聞きたかったので、打合わせで抜けてそのまま昼行きますって言っておきました」
「何かトラブってる?」
「いえ。そういう訳じゃないです」
会社から5分ほど離れたところの雑居ビルの中の可愛らしいパスタ屋さんに着くと、まだ時間が早いせいかほとんどお客さんがいなかった。
「こんなお店、良く知ってるね」
「同期が教えてくれて。あまり会社の人来ないし、美味しいよ」
それぞれ注文が終わるとすぐに、木村君が口を開いた。
「中澤は、やっぱりダメ?」
「中澤くん?」
なるほど・・・。会社では話しにくい話題だから、こんなところまで連れ出したのか。
「アイツ、佐多さんから連絡ない、って落ち込んでる」
1か月前の休日に一緒に出掛けた後、メールで告白らしきことを書いて・・・そのままになってしまっていたのは確かだ。
「うん・・・。ちょっと連絡しずらい、というか、連絡してないかな」
「アイツ、どうやら本気で佐多さんみたいで、切羽詰まった感じで連絡してきたんだけど。脈ない感じ?」
「・・・話してて楽しいし、食事に行くだけならまた会ってもいいかな、って思ってたんだけど、メールの内容がちょっと告白っぽくて・・・。そういう感じならもう会わないほうがいいかな、と思って・・・」
「そっかー。まあ、そうかな、とは思ってたんだけど・・。」
「木村君は中澤君に何か言われてるの?」
「俺は最初に佐多さんに彼氏がいないってことを中澤には伝えてあったから。週末中澤と飲んだ時に、もしかして佐多さんって好きな人いるのかな、って聞かれた」