拗らせ片想い~理系女子の恋愛模様
「俺に会いに来たって言ってた」

「田中さんに?」

「満里ちゃん、元気か、って聞いてたよ。傷つけてしまって、それっきり会えてなくて、ずっと気になってたって」

「・・・・・」

「俺も満里ちゃんから話聞いてたから、何があったか大体のことはわかってるつもり、って言ったんだ」

「・・・そしたら?」

「何も・・・。辛そうな顔して、ひたすら飲んでた。大事な同期だったのにって。」

「そう、ですか」

「会いたい?」

「・・・いえ。だけど、いまだに信じられない、というか・・・研修の時は本当に優しかったんです。私が熱出した時も、試合とかあったはずなのにずっと側にいてくれたこともあって。それも全部下心があったってことなんでしょうけど、それにしても、だいぶ長い間優しくしてもらいました」

「もしかしたら、少し誤解もあるのかもしれないね」

「誤解?」

「うん。だけど、都合よく満里ちゃんを呼んでたのは事実だしね。彼もそこはわかってるんじゃないかな」

「・・・・もう彼に気持ちはないので」

「うん。それも分かってる」

そういうと、田中さんが私のほっぺにそっと手を伸ばしてきた。

「満里ちゃんは、大丈夫だと思うよ」

「え?」

「俺だって、満里ちゃんを独り占めして、ずっと側にいてほしいって思ってたんだからね」

「・・・そうなんですか?」

「満里ちゃんが辛い思いしてるところに付け込んだ自覚があったから、時間かけるつもりだったんだ」

「・・・・・」

「それなのに、失敗した。満里ちゃんしか、満里ちゃんだけだったのに・・・」

「・・・・」

「彼、余裕そうに見えて、結構切羽詰まってると思うよ。満里ちゃん覚悟したほうがいい」

「彼?」

そう聞き返したときに、ちょうど須藤さんが戻ってきた。田中さんが私の頬に当てていた手を、スッと引いた。

「ごめん、大丈夫?」

須藤さんは席に座りながらそう私に聞きながら、目は田中さんを見ている。

「大丈夫です。仕事、ですか?」

結構長電話だったが、何かトラブルだろうか。

「いや、親父から。来週親戚の集まりがあるから、その件で」

「大丈夫ですか?」

「俺は全然。そっちこそ、大丈夫?」

ちらりと田中さんを見て、また聞いてきた。須藤さんが電話をしている間、二人で話していたのを見たのだろう。

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