拗らせ片想い~理系女子の恋愛模様
大丈夫です、と答えたが、続けて聞いてきた。

「何話してたの?」

「・・・昔話を、少しだけ」

「昔の話・・・だけ?」

「・・はい・・」

「これからの話とか、してない?」

そう言うと、手を伸ばし、私の頬に触れてくる。
これからの話・・・?とは、何だろう。

「どうしてあの人はお前に触るの?」

「それは、多分・・・・私を慰めてくれたんだと思います。昔の、少し嫌な思い出を話していたので」

「お前は・・・何で触らせるの?」

「・・・・・」

「こうやってされると、落ち着く?」

右手で私の頬に置いている手を、少し後ろにずらし、私の後頭部を自分の方に引き寄せながら左手で私の手首を掴んでくる。
須藤さんの顔がグイっと近づいてきて、あまりの近さに驚き、のけぞって距離を取ろうとするが、更に力が入り離れることができない。

「あ、あの・・・」

「どう?落ち着く?」

「いえ、あの、ドキドキして落ち着かないです」

「あの人にされたときも、ドキドキした?」

「・・・・・」

田中さんは、牧野くんの話をして、私が嫌な思いをしたのではないかと、心配してくれただけだ。確かに昔話をしたが、今はもう田中さんに対して特別な感情を持ってはいない。本当に昔のことだ。

「俺は、こうやってお前に触ってても、誰かに触られてるのを見ても、すごいドキドキする」

「・・・・」

「少し時間がかかっても仕方がないと思ってた。お前は掴みどころがなさすぎる。だけど、あの人とか、中澤とか、簡単に近づけるし危なっかしいにもほどがある。誰にも触れさせたくないんだ。」

「・・・おっしゃってる意味がわかりません」

酔ってきているのもあり、完全にキャパオーバーだ。頭がフラフラして、言われていることがすぐに理解できない。
須藤さんに触れられている頬と手首がやけに熱い。
やたらと近い須藤さんの顔を直視できず、視線を逸らそうとするが、須藤さんはそれを許さず、強引に顔を正面に向けてくる。
息を詰めていたせいか、余計に心臓がドキドキしているのが、須藤さんに触れられてドキドキしているのか、調子に乗って飲みすぎたお酒に酔っているのか判断がつかなくなってきた。

それに、さっきから私を口説くようなことを言っているが、梅田さんはどうしたのだろう。
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