拗らせ片想い~理系女子の恋愛模様
そう言われて、ソファに腰を掛けると、大丈夫か?と水を持ってきてくれる。
少しだけ窓を開けてくれて、涼しい風が入ってくると、急速に頭が冴えてくる。

離れたくなくて、今日だけでもいい、と思い、縋りついてしまった。

・・少しは私に好意は持ってくれているのかもしれない。しかしそれが私の望むような形であるかどうかはわからないまま、今日このまま一緒に過ごすのは・・・もしかしたら後々、後悔することになるかもしれない。でも・・・・

今日だけでも、一緒にいられるなら・・・
いや、はっきりしない関係のまま、一夜を過ごすのは、この後気まずくなるだけだ。今後の仕事に差し障るかもしれない。やめるなら・・・帰るなら、タイミング的には今だ・・・。

両方の思いが行ったり来たりして、なかなか決心がつかない。ここまで来ておいて怖気づくなんて最低だが、ベランダに出て風にあたる。

考えがまとまらないまま、外を眺めていると、須藤さんがベランダに出てきた気配が感じられた。

「気分はどう?」

そう言いながら後ろからふわりと抱きしめてくる。
やっと治まった心臓の鼓動がまた急速に早くなる。

少しでも時間を稼ぎになればと、一旦離れ、部屋にもどる。
タクシーに乗る前にキスされたときよりずっと柔らかく、力も込められていなかったため、簡単に腕はほどけた。

冷蔵庫を開けて、もう一本、水を取り出していると、須藤さんもベランダから部屋に入ってきた。もらってもいいですか、と聞くと、もちろん、と言われ、取り出して飲む。

須藤さんがベッドに腰を掛けたのを見て、私はソファに腰を掛ける。
両ひざに肘をのせて、半ば怒ったような顔を向け私の顔をジっと見つめ視線を反らさない。その視線に耐えられず、立ち上がって洗面所に逃げた。

鏡を見ると、少し赤いが自分ではそこまで酔っているようには見えないし、実際すっかり酔いは醒めてしまっている。
少し前から気づいていた。須藤さんのことが大好きなのに、尊敬しすぎて近寄れず、また、梅田さんの存在に惑わされているのだ。
今夜、もっと距離が近づけたら、自信が持てるかもしれない・・・

コンコン、とドアがたたかれ、

「大丈夫か?」

心配そうな声が聞こえた。迷いを振り切り、洗面室の扉を開けると、須藤さんが心配そうに顔を覗き込んできた。

「大丈夫です。すっかり醒めました」

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