拗らせ片想い～理系女子の恋愛模様

必死に声を押さえているが、怒りが収まらない様子で、再び私の腕を掴んでくる。

「お、思ってません！だから私だって悩んだんです」

私がそう言うと、目を細めて訝し気に私を見て、どういうことだ、と低い声で言った。

「少し前から須藤さんが誘ってくれたり、私への印象を話してくれたり・・・私に好意を持ってくれてるって感じてたんです。だけど、梅田さんが変にマウント取ってくるし、私がうぬぼれてただけなのかな、って思ったり・・・よくわからなくなってたんです。

そんな時、大事にするって言ってくれて私と一晩過ごしたのに、ご両親から縁談を進められてるって聞いて。その相手が梅田さんなんじゃないかって。

もしかしたら須藤さんもつらいんじゃないかなって、思ったりもしたんです。他の人と結婚はするけど、私のことも好きなのかな、って。だから結婚するまでの間私と一緒にいたいのかもって思いました。自惚れかもしれないけど。

でも、それじゃあ、私の気持ちはどうなるのって思ったんです。
須藤さんを好きなまま、結婚してしまったらサヨナラなんて、耐えられる自信がなくて、だったももう会わないほうがいいって判断しました」

言い終わると、鼻の奥がツンとした。何だか泣きそうだ。
私だってつらかったのだ。とっくに須藤さんのことは好きなのに、須藤さんの心が見えないだけに、自分の気持ちに蓋をするのに必死だったのだ。

中澤君や田中さんのことだって、変にけん制してくるくせに、はっきりと自分の気持ちを言ってきたことはない。
だから、本気ではないのかも、と思うようになったのだ。

「判断しました、って・・・。勝手に判断するな」

先ほどとは違って、優しい声で言ってふわりと抱きしめてくる。ヤバい、いよいよ泣きそうだ。

「俺の結婚話していたのは企画部の女子たち？」

コクンと頷くと、私の頭を胸に抱いてくれた。

「ごめんな。この前の部の懇親会に企画部の人も何人か来てた時、部長が結婚話してきて。考えてないって答えたら、変に紹介するとかって話になりそうだったから、親が縁談持ってきてるってことにしたんだ」

すっかり忘れてた、と言って苦笑いした。