40歳88キロの私が、クールな天才医師と最高の溺愛家族を作るまで
「さっき、ありのままでって言ったけど、1つだけ、君に変えて欲しいことがあるんだけど」

樹さんに私の家まで車で送ってもらってる間、急にそんなことを言われた。
何だろうと思っていると、樹さんは私の服を指差しながら

「黒い服を、できればあまり着ないで欲しい」

と言った。
樹さんからの指摘で、私は改めて、樹さんと会う日は黒い服ばかり着ていたと言うことに気づいた。

(どうして樹さんは、そんなお願いをするのだろう?)

私が不思議に思っていることに、樹さんは気づいたのだろう。

「君には、もっと明るい色が似合うと思う」
「いや、それはちょっと……」

今更この体型で、かつ40にもなる年齢で明るい色を着るのには抵抗があった。
だけど樹さんは

「一緒に買いに行こう」

と譲らなかったので、次の週にはピンクや黄色といったパステルカラーの洋服が、樹さんによって買い与えられてしまった。
自分には似合わないと思っていた、可愛らしい洋服の数々に眩暈がしそうになったが、試着室から出ていく度に

「可愛いよ」
「素敵だ」

と樹さんが褒めてくれたおかげで、ほんの少しだけだが

(明るい色に挑戦してもいいかも)

とも、思えるようになった。
そんな自分にもう1度会えるとは、思っていなかった。
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