40歳88キロの私が、クールな天才医師と最高の溺愛家族を作るまで
「佐野さんって言うんですね、お綺麗ですねぇ……」
「ありがとう。そう言ってくれて嬉しいわ。ねえ、森山さん」
「はい……」

現在私は、男性2人と佐野さんに囲まれている。
正確に言えば、佐野さんを囲っている男性2名と佐野さんの近くに棒立ちさせられている。。

佐野さんが私を連れてきたのは、やはり婚活パーティー。
最後の可能性として考えていた、あくまで自分は佐野さんのお付きであり、婚活の参加者としての登録はされていない……という目測も

「ほら、あなたも名前書きなさい」

と、受付にてあっさり参加者名簿を渡されて砕け散った。

(どういうつもりだ……?)

「佐野さん……私婚活をする気は……」
「あなたは今日、私の傍から離れなければ良いわ」
「え?」

(それだけ……?)

「その目的は……?」

と聞こうとしたが、ささっと佐野さんに汗拭きシートを渡され

「5分あげるから、その汗全部取ってきて」

と、問答無用でトイレまで連行された。
そうして今、私は最初のイベントが始まるのを、佐野さんの傍で居心地悪く立たされている。
次から次へと、佐野さんに

「あなたも参加者なんですか?
「ラッキー」

などと男性が話しかけていっては、私を居ないもののように扱っていくのに、心がようやく慣れ始めた頃……。

「きゃあああああ!」

と急に部屋中の女性が色めきたった。

(な、何事……!?)

「来たわね……」

佐野さんも、今までつまらなそうにしていたのに、一気にハンターの目に早変わり。
こういう時の佐野さんは、仕事で失敗をしない。

「あの、……どういうことですか?」
「森山さん。お願いがあるのよ」
「……はい……?」

(……ここに来て、またお願いかぁ……)

佐野さんが、ある方向に指をさす。
指さしはあまり好きじゃないな……でも佐野さんの指すごい綺麗だな……など色々複雑な思いを抱きながら、指先の方向を見る。

(えっ……!?)

清潔感漂う、上品なスーツと空色のネクタイがとてもよく似合う人
明るい蛍光灯の中でより際立つ、涼しげな目元に整った顔立ちの人。
エントランスでぶつかり、名前を聞けば良かったと後悔をしたあの人が、丁度会場に入ってきたところだった。
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