40歳88キロの私が、クールな天才医師と最高の溺愛家族を作るまで
あっという間に機内は暗くなり、ほとんどの乗客が寝静まった。
俺は、隣にいる優花の寝息を聞きながら眠ろうと試みるが、なかなか夢に落ちることができないでいた。
少しして、CAが俺の横を通りがかったので、赤ワインを注文し、一気に飲み干した。

(少しでも酔えば、眠れるかもしれない……)

それを期待して、飲み干してみるが、ちっとも酔えない。
ふと、カクテルのメニューを見ると、見たことがある名前があった。

マイタイ。
ポリネシア語のタヒチ方言で「最高」という意味だそうだ。
それを俺に教えた女性こそが……マナの母親のマオ・ミラー。
健康的に焼けた肌と黒髪を持つ、生まれも育ちもハワイの女性。

俺は、彼女とは恋愛関係では決してなかった。
でも……恩人だ。
もし、彼女に出会ってなければ俺は……この地で命を落としていたかもしれないから。

「すみません」

俺はCAを呼び、マイタイを注文して一口飲んだ。

「……甘い……」

ラムの香りが鼻腔をくすぐると、封印したいと思っていたかつての記憶が蘇ってきた。
< 150 / 229 >

この作品をシェア

pagetop