40歳88キロの私が、クールな天才医師と最高の溺愛家族を作るまで
初期研修医時代、初めて俺は挫折という2文字が頭をよぎった。
先輩医師の話は、全く分からない。
たくさん知識は入っているはずなのに、それを滑らかに使えない。
必要な器具の場所も、分からない。
指示を出す相手の看護師にすら、まともに話せない。
先輩医師からの叱責は数知れず。

そして最も俺を困らせたのは……自分で判断しなくてはいけない数の多さ。

医師の仕事は、全てが判断でできている。
そう言っても過言ではないだろう。

目の前の患者に何を聞けば良いのかを判断する。
そこから、患者の病名を判断してから、治療法も判断する。
そこには看護師への指示も含まれている。

判断とは、物事の真偽を見極めて、自分の考えを決めるという意味だ。
つまりは、自分の責任で選択をすることだ。

俺は、自分の軸で選択してきたものが何もなかった。
だから、選択の仕方を……知らなかった。

そこそこ、できていると思っていた。
それなりに、ちゃんと生きていけると思っていた。
でも、この時期初めて、自分の中に大きな欠陥があることを知った。

そんな自分を救ってくれた恩師の名は、ケビン・ミラー。
ハワイからやってきたという、救命救急の専門医で、俺が勤める大学病院に技術と知識を教えに来てくれた人。
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