40歳88キロの私が、クールな天才医師と最高の溺愛家族を作るまで
「さあ、好きなものを頼みなさい」

連れて行かれたのは、彼の故郷であるハワイの料理が堪能できるレストラン。
ロコモコやガーリックシュリンプといった、ハワイではよく食べられているメニューが売りらしい。

「君はステーキは好きかい?」
「…………あの…………」

直前治療していたのは、大火傷の患者だった。

「ハワイのステーキはね……大きいんだよ」

ケビンはステーキを頼む気満々だった。
タフな人なんだな……と思った。

(これくらいの人だから、あんな悲惨な現場でも落ち着いていられるんだろうな……)

俺は、サラダと烏龍茶だけ頼んだ。
結果的にそれは正解だった。
何故なら、ケビンの食べっぷりに、胸焼けしそうになったから。

「何か、飲むかね?それともデザートでも?」

一通り食べ終わった後にケビンが聞いてきた。

「いえ、結構です」

この疲労と体調で、アルコールを入れてしまえば、明日起きられる自信が全くなかったから。

「そうかい。それじゃあ、私は1杯もらってもいいかな」
「どうぞ」
「ありがとう」

この時、ケビンが頼んだカクテルはマイタイ。

「ハワイにいる娘がね、これを好きでよく一緒に飲んでいるんだよ」

そう話すケビンは、子供を愛する父親の顔をしていた。
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