40歳88キロの私が、クールな天才医師と最高の溺愛家族を作るまで
「何で、こんなところに連れてこられたんでしょうか?」

氷室さんは、パンケーキを一口頬張って、それはそれは美味しそうに咀嚼してから、私の問いにこう答えた。

「奢っていただけると、おっしゃったので」
「確かに、言いましたけど……」

(こんなオシャレなデートスポットに来るなんて……完全に想定外……)

最初想像していたのは、せいぜいファミレスの定食くらいだった。

「森山さん」
「ど、どうして私の名前を……?」
「あ……失礼……。森山さんという名前ではないですか?」
「いえ……合って……ますけど……何で……?」
「さっき、呼ばれていたので」

(ああ……佐野さんか……)

トキメキ要素は、欠片もなかった。

「それで、森山さん。体調はどうですか?」
「あ……もう大丈夫です」
「それなら良かった」

氷室さんのパンケーキの皿は、あっという間に空になっていた。

「助けていただいて、ありがとうございました。それから、忠告を守らずご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」

やはり体調が悪くなったと、エントランスで佐野さんに会った時にちゃんと言っておけば、こんな騒ぎを起こさずに済んだのではないかと、後悔をした。
ところが、氷室さんの口から、意外な言葉が飛び出した。

「助けられたのは俺の方です」
「え?」
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