40歳88キロの私が、クールな天才医師と最高の溺愛家族を作るまで
「怒っていい……とは?」

(この人は、急に何を言い出すのだろう)

「……私なんか……怒る資格なんて……」

(そもそも、何に怒る必要があると言うのか……)

私が本気で戸惑っていると、ケビンが寂しそうに目を細めた。

「イツキが、少し可哀想になってくるよ」
「可哀想……?」

(何が、どうして、樹さんが可哀想という結論になるのだ?)

頭の中で、はてなマークが踊っている。
私の状態を、誰かに漫画のコマにでもして欲しい。
そうすれば、ケビンさんにも私の動揺が伝わるはずだから。

ケビンさんは、1回深いため息をついてから

「少し長い話になりそうだ、ちょっと待ってて」

とリビングを後にした。
私は、取り残された迷子の子供のような心境になり、だらだらと汗をかいていた。
それから、ほんの5分後に、ケビンは戻ってきた。
手には、写真立て。
私の目の前に置かれたそれに写っていたのは、家族写真。
ケビンさんと、明らかに日本人と分かる女性、そしてマナちゃんによく似た……ぽっちゃり体型の美女。

これが、ケビンさんの家族写真であることは、どんなに鈍くても分かる。
さらに、このぽっちゃり美女が、樹さんの子供を産んだということも……。
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