40歳88キロの私が、クールな天才医師と最高の溺愛家族を作るまで
「関心……ですか?」
「君は、あまり樹の過去を聞かないようだね」
「それ……は……」
「どうしてか、聞いてもいいかな?」
「……私が、聞いてほしくないからです」
「ほう?」
「人は、誇れる過去があるならば、聞かなくとも勝手に話します。でも、そうじゃない人は、自分から過去を話すことは……ないです。だから私は……」

秘密は、秘密のままでいい。
これは私が傷ついてきた歴史から生み出した、私の心を守るおまじない。

「なるほど。君も……辛い想いをしてきたんだね」
「いえ、私なんか大したこと……」
「君は、いつも自分を見下す事ばかり言うんだね」
「え?」
「自分なんか、私なんか。今日会ったばかりの私でも、それが君の口癖だと分かってしまったよ」
「あ……」

(気づかなかった……)

「それを聞かされ続けたイツキが悩むのも、無理はないな」
「え?」
「自分がどうしようもなく好きな初恋の女性が、自分で自分を傷つけている姿を間近で見ていたのだから」

(自分で自分を……傷つけている……?)

そんな事、ちっとも考えた事がなかった。
ケビンさんは、そんな私の手を、再度掴んできた。

「どうして、自分以外の女と子供を作ったんだ」
「え?」
「君は、イツキにそう言ってあげて」

それは、樹さんを責めろ、と言っていることと同じではないか、と思った。

「さすがにそれは、ワガママすぎる気がするのですが……」

そんな事を言う資格……私なんかにあるのだろうか?
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