40歳88キロの私が、クールな天才医師と最高の溺愛家族を作るまで
いざ、お参りをしようと手を合わせて気づいた。
お賽銭に使えるお金を持っていなかったことに。

(後で、ちゃんと改めて来ますから)

心の中で唱えてから、私は手を合わせる。
説明されているお参りの作法は、日本と全く一緒だった。

(こうしていると、川越を思い出すな……)

樹さんと、初めてちゃんと遠くに出かけた日。
そして、樹さんと自分のあまりの違いに悲しくなり、逃げ出そうとした日。
そして、樹さんに告白された、特別な日。
あの場所も、縁結びで有名だった。

ちらりと横目で樹さんを見てみた。
真剣に、何かを祈っていた。
川越の時は、私の方が長く祈っていたから、樹さんの祈り姿は見られなかった。
私の視線に気付いたのか、樹さんがこちらを見た。

……表情はほとんど変わらないはずなのに、今にも泣きそうだと気付いた。
そんな彼が、心の底から愛しいと思った。
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