40歳88キロの私が、クールな天才医師と最高の溺愛家族を作るまで
あのタワマン婚活事件から今日まで、氷室さんと私が直接会ったのは2回。
1回目は、例の最寄駅のカフェを案内した時。
Tシャツ、ジーンズというラフな格好に、質の良いジャケットを羽織った氷室さんの姿を、待ち合わせ場所の駅で見かけた時は、あまりの神々しさに目が潰れるかと思った。
一方の私は……。
(勘違いするな……これはデートではない……私は案内人……黒子なのだ……)
あえて、いつも通りの服を選んだ。
だが、今こうして氷室さんを見ると、無理してでもオシャレな服を着てくれば良かったかもしれない、と後悔したが、もう遅い。
「森山さん、こんにちは」
「……こんにちは……」
私が、氷室さんにおそるおそる近づくと、どこからともなく
「え、あのイケメンあんなデブが彼女?」
「だったら私もいけるかも?」
という声が、ちらほら聞こえてきた。
私はその場で俯き、聴覚をシャットアウトする。
(これは、デートではない。断じて。勘違いなんかしない。そう、私は……)
と繰り返し念じた。
「……どうしました?森山さん」
(よしっ!)
「さあ氷室様!目的地はこちらでございます」
「はい……?」
氷室さんの表情は、相変わらず変化はなかったが……。
(引いてる……氷室さん、絶対引いてる……)
きっと、氷室さんと会うのは今日で最後だろう。
今度こそ。
そんな風に思っていたので、今日さえ乗り切ればいいだろうと、思っていた。
1回目は、例の最寄駅のカフェを案内した時。
Tシャツ、ジーンズというラフな格好に、質の良いジャケットを羽織った氷室さんの姿を、待ち合わせ場所の駅で見かけた時は、あまりの神々しさに目が潰れるかと思った。
一方の私は……。
(勘違いするな……これはデートではない……私は案内人……黒子なのだ……)
あえて、いつも通りの服を選んだ。
だが、今こうして氷室さんを見ると、無理してでもオシャレな服を着てくれば良かったかもしれない、と後悔したが、もう遅い。
「森山さん、こんにちは」
「……こんにちは……」
私が、氷室さんにおそるおそる近づくと、どこからともなく
「え、あのイケメンあんなデブが彼女?」
「だったら私もいけるかも?」
という声が、ちらほら聞こえてきた。
私はその場で俯き、聴覚をシャットアウトする。
(これは、デートではない。断じて。勘違いなんかしない。そう、私は……)
と繰り返し念じた。
「……どうしました?森山さん」
(よしっ!)
「さあ氷室様!目的地はこちらでございます」
「はい……?」
氷室さんの表情は、相変わらず変化はなかったが……。
(引いてる……氷室さん、絶対引いてる……)
きっと、氷室さんと会うのは今日で最後だろう。
今度こそ。
そんな風に思っていたので、今日さえ乗り切ればいいだろうと、思っていた。