40歳88キロの私が、クールな天才医師と最高の溺愛家族を作るまで

数年程前、俺は自分のクリニックを開業した。
駅から少し遠めの、アクセスが悪いところに建てられた、古いが日当たりが良い一軒家を購入し、中を改装して創った。

別に、何か目的があったわけではない。
クリニックを作ること自体も、ただそれしか選択肢がもう無かったから、そうした。
だから内見の時も、ちゃんと患者が来るかという視点では決めなかった。
ただなんとなく、この場所がいいと思っただけ。
穏やかな時が、過ごせるような気がしたから。

その予感は当たった。
今の俺は、ゆったりとした時間を過ごせるようにはなった。
いつものように、このクリニックを訪れる人を受け入れ、求められることだけをこなす。
淡々と、それだけを繰り返す。
何度も、何度も。
ぬるま湯に浸かった時のような、中途半端な心地よさだけが、俺をこの世界に、上手に留めてくれている。

「お前が選ぶことはもうない」
「お前は、ただ求められたら答えればいい」

……それが、俺の人生の軸。