40歳88キロの私が、クールな天才医師と最高の溺愛家族を作るまで
最初のカフェデート……だと俺は思っている……の日に、優花は言った。

「彼氏はいたことがないから、男性と二人でいる時のマナーがわからず……申し訳ないです」

と。
彼女は、申し訳ないと言った。
けれど、俺にとっては、それが嬉しかった。
初めての男が俺でありたいう欲望が熱を生み、身体中に広がった。
けれど……どうすれば彼女の初めての男になれるのかという、難題が同時に降りかかってきた。

これまで俺が関わってきた女性であれば、恋愛関係に関する何かしらのワードを自分たちから匂わせてきた。

「ねえ、彼女にするならどんなタイプ?」
「恋人とも、こんな風に過ごすの?」

などと、間接的に聞いてくるケースが多かった。
中には

「私が恋人になるって考えたことないの?」

などと、直接的に聞いてくる女性もいた。
しかし彼女については一向に、そういう匂わせはしてこない。
メッセージでのやり取りでも、すでに感じていたが……彼女は傾聴が上手い。
ただ頷くだけではない。
良いタイミングで頷いたり、欲しいと思う返答を返してくれる。
だからなのだろう。
彼女との会話は、とても気持ちが良い。

内容は、俺の好きな映画や本の話が中心。
自分が話やすい形で会話をさせてくれるから……というのが、気持ちよさの理由の1つだろう。
だけど、それだけではない。
優花の返答を聞くのがまた、とても心地よい。
ふわふわのクッションに包まれるかのように。

だから、もっと俺は話題を作ろうと頭を捻る。
そして彼女の声を聞きたいと、必死になる。
このキャッチボールを、もし許されるならずっと続けたいと思うほど、俺はこの時間を楽しんでいた。

だからこそ、俺は焦りもした。
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