40歳88キロの私が、クールな天才医師と最高の溺愛家族を作るまで
彼女は、付き合った男はいないと謝った。
でも、好きな男がいないとは、言っていない。
その一方で……俺に対しての好意も、全く見えてこなかった。

彼女から嫌われていないのは、分かる。
嫌いな異性の話を、いくら彼女の性格が善良だからと言って、長時間聞き続けられるものだろうか?
少なくとも、俺が知っている女性たちは、その辺は容赦なかったと記憶している。

優花は、彼女自身の恋愛に関わる話はきっかけすら与えない。
そういう話題にならないように、上手に避けているのだと、数時間、話をし続けたことで、ようやく分かった。
まるで、彼女の心が、カーテンに覆われているかのようだった。

(何故、頑なに自分自身の恋愛の話を拒むだろう?)

その理由を知りたくて、ランチからディナーの時間まで会話を引き伸ばして探ったが、結局何も出てこず終わってしまった。
次に会う約束のきっかけすら、彼女からは引き出せなかった。

「それで、どうしましょうか?」
「どうしましょうか……とは?」

俺が決死の覚悟で次の話をした時、彼女はさも当たり前のように

「次なんてあるんですか?」

と言いたげな顔をした。
もし、この時無理やりにでも次に繋げる提案をしなければ、きっと彼女は自然と俺と連絡を取ることをやめてしまうかもしれない。
何故か、そんな予感がした。

だから考えた。
どうすれば、彼女との縁が切れないようにできるか。
そして覚悟した。
小さなきっかけの欠片が1つでもあれば……それを利用して、彼女に恋愛対象としてもらえるように仕向けようと。
そしてそのきっかけを手に入れることができたのは、思いの他……早かった。
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