40歳88キロの私が、クールな天才医師と最高の溺愛家族を作るまで
誰が去る時は、仕方がないと諦めていた。
相手の期待に、自分が応えられなかったのだから、と。
だからいつもの俺だったら

「体調が悪いのなら、仕方がない」

で、きっと済ませた。
だけど、今俺の心は、様々な感情に支配されていた。

今日を特別な日にすると言った時に、頷いてくれたじゃないか。
俺の側で笑ってくれたじゃないか。
楽しんでくれていたじゃないか。

本当に体調が悪いと言うのなら、どうして医者である自分に話してくれなかったという、優花への苛立ちと悲しさ。
もしかしたら、体調が悪いと言うのはいいわけで、本当は俺と一緒にいるのが苦痛だったのではないか……という不安と焦り。
そして、彼女の様子に医者なのに気づけなかった自分への怒り。

自分本位な感情は、理性を殺す。
だから感情は極力出さないように、努力をしたつもりだった。
理性は、俺にとって必要な武器だったから。
仕事をする為にも、自分を守るためにも。
それなのに、俺は感情が体を支配し、川越の街中を走らせる。

彼女を捕らえろと、俺の心が叫んだ。
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