40歳88キロの私が、クールな天才医師と最高の溺愛家族を作るまで

今までは

「樹さんのことは恋愛対象にしない、ならない、勘違いすんなよ」

がモットーだったので、わざわざ、でろんでろんになった服着て来ていた。
だけど、彼氏彼女として会う関係性の場合は……いくら私でもそれを着るのは躊躇われる。
とは言え、今まで通りECサイトで服を買うのも憚られた。
写真というものは加工ができて、実物よりずっと良く見せることができるものということを、私自身がよーく知っているからだ。

見せる人が特にいない場合は、正直それでもいい。
値段も安いし。
だけど……そもそも服のことだけではない。
このままの姿で樹さんの側にいるということが、そもそも許さないと……世間に言われてしまう気がした。
というか、すでに言われてるではないか。

だから、土曜日に貯金を持って色々試すことにしあ。
普段行くようなショッピングセンターではなく、わざわざ電車を乗り継いて、高級なデパートに行ってみた。
恥を忍んで、着痩せする黒い服を選んでもらった。
さらに、コスメカウンターで化粧の仕方も習った。
ちなみに、その日の最後には、高級エステの体験にも予約して行ってみたのだが……細くて綺麗なお姉さんに自分の裸体を晒すのが地獄すぎて辛かったので、もう少し痩せてからにすれば良かったと後悔しっぱなしだった。
勿論、ウン十万するコースにも勧誘されたが、そこは羞恥心もあったので、うまく逃げ切ることができた。

（綺麗になるって、こんなにめちゃくちゃお金がかかるのか……）

改めて思い知り、その日の夜はぐったりしてしまった。
そんなこんなはあったものの。
どうにか作り込んだ姿で日曜日に会うことができ、かつ樹さんに「良い」と褒めてもらえたので、どうにか安心した。
けれど、樹さんはそれだけでは終わらせてくれなかったのだが。

「せっかくなので、どこか外を歩きますか？」