40歳88キロの私が、クールな天才医師と最高の溺愛家族を作るまで
「ごちそうさまでした」

と帰り際、慣れたように私の唇にキスをして去っていく樹さんを見送りながら、初めての幸せに酔った私は、そのままカレンダーの12月24日にハートマークを描き、そこまでの日付に全て「ダイエット」という文字を記載した。

今は9月下旬。
約3ヶ月あれば、少しはマシになるだろう。
私は早速昔買って放置していた運動着に着替えて、今食べた分を消化するために、近所を走ることにした。

前は、なんとなくで始めたダイエットも、今回は成功するかもしれない。
樹さんが好きだから。
樹さんに好きと言ってもらえてるから。
そんな樹さんに相応しいと、誰からも思ってもらえる女になりたいと、思えるようになったから。

だけど私はこの先で、もうちょっとだけ、考えるべきだったと後悔することになる。

想像するべきだった。
立ち止まるべきだった。
あのハイスペックすぎる樹さんの、過去のことを。
自分と樹さんの釣り合いの取れなさを。

そうすれば、もうちょっとだけショックは少なかったはずだっただろうから。
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