40歳88キロの私が、クールな天才医師と最高の溺愛家族を作るまで
違和感は、目が覚めてから始まっていた。
体が、ちっとも動かない。
頭がぐらぐらするし、とにかく疲労感がすごかった。
まるで、1日中フルマラソンでもしていたかのようだ……と思った。

(横になっていれば、その内落ち着くだろう……)

と考えながら、私はスマホの時計と睨めっこをする。
刻一刻と、樹さんが家に迎えに来てしまう時間が近づいてくる。
目眩のような症状は治まってきたが、疲労感は消えない。
どんどん、冷や汗が身体中から湧いてくる。

(後で毛布洗濯しなきゃな……)

と思うくらいびっしょりになった頃に、ようやくまともに動けるようになった。
時計が示すタイムリミットは、あと30分。
動画を見ながらのマッサージなど、している余裕はない。
せめて汗だけでも流したかったので、急いで浴室へと向かい、シャワーをささっと浴びてから体重を測った。
スタートは88キロだったが、もうすぐ70キロ代の突入するところ。
昨日の、水だけダイエットのおかげもあるのだろう。
努力の結果がありありと分かる数字が、辛うじて私の意識を保たせてくれた。

樹さんがインターホンを鳴らす頃には、用意していた洋服をどうにか身につけることだけはできていた。
髪型は凝る時間が全くなかったので、可愛いシュシュを使って簡単なお団子ヘアにするくらいだったが、樹さんが私の姿を見てすぐに

「可愛い」

と言って抱きしめてはくれたので、報われた気がした。
ただ、疲労感だけはいくらシャワーを浴びても、新しい服に身を包んだとしても、消えはしなかった。
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